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 ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。  作者: 米糠


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 第一聖騎士団の重装鎧が、石床を踏むかすかな音だけを残して奥へ進んでいく。

 遺跡の内部は湿った冷気が漂い、魔石灯の橙の光だけが、古代の壁画をぼんやり照らしていた。


 俺は背後を振り返り、外の光が遠ざかっていくのを確認する。

 前方では、ゼノ団長が剣を片手に慎重に進んでいた。


「まて……」

 突然ゼノ団長が小声で止める。

 

 ゼノ団長が曲がり角の先を覗き見ながら、真剣な表情で制していた手で招く。


 ゆっくりと聖騎士団が進み始める。後ろで見ていた俺には、よく分からないが、たぶん黒笛のメンバーとの接触は近いのだろう。前方にそれらしい気配を感じる。


「いけ!」

 突然ゼノ団長の指示が飛ぶ。聖騎士達が突っ込んでいった。

「確保しろッ!!」


 重い鎧が石床を蹴る音、怒号、剣が抜かれる甲高い音。

 遅れて角を曲がった俺の目に飛び込んできた光景は――


「あっ、あああッ!? お、お前ら誰だ!!」

「ひぃっ……!! ちがっ、俺らは見張りで……!」


 黒笛の構成員と思われる男たちが三人、慌てふためきながら壁際に追い詰められていた。


 聖騎士たちは寸止めの形で剣を並べ、完全に包囲している。


 ゼノ団長が鋭く一歩踏み出す。

 鎧のきしみだけで威圧感がすごい。


「――動くな。武器を捨てろ」


「す、すでに捨てました! もう持ってませんって!!」


「この遺跡の奥にどれだけ仲間がいる?」


 ゼノ団長の問いに、黒笛の男は口を震わせながら答えた。

「七、七人本当だ! 俺たち見張りで……奥の部屋に、頭と、もう六人……」


「よし! 奥の部屋も制圧するぞ」

 団長の号令が響くと同時に、奥の部屋の扉が開いた。


「や、やべー! 手入れだー!」

 顔をのぞかせた黒笛のメンバーが、こちらに気付いて逃げ出した。

「頭ー! 大変だー!」


「逃がすな! 追え!」


 扉を蹴破り、聖騎士達が突進する。俺は最後尾から奥の部屋に入った。

 そこには黒い金属板を組み合わせた奇妙な祭壇と、祈りをささげる男たちがいた。


「な、なんだこいつら……!? 聖騎士だとっ!?」

「頭! もう無理です! 逃げねぇと――!」


 だが、その「頭」と呼ばれた男は動じなかった。

 四十代前後、黒い法衣の上から奇怪な紋章入りの外套を羽織り、手には禍々しい黒角の杖を握っている。片目が赤く輝き、常人ではない魔力を漂わせていた。


「教会の聖騎士か。ここまで来るとは誉めてやろう。……だが手ぬるいな」

 低い声で呟くと、祭壇の上の黒金属の蓋がカチリと音を立てた。


 ゼノ団長が即座に反応する。

「頭だけは絶対逃がすな! 祭壇には気をつけろ、何か仕掛けがありそうだ!」


「はっ!!」


 聖騎士たちが一斉に散開し、黒笛の構成員へ突撃する。

 逃げようとした男たちの腕をひねり上げ、次々に地面へ押し倒していく。

 鎧と鎖の音、怒号、悲鳴が入り混じる。


 だが、頭だけは、まったく逃げようとする気配がなかった。

 むしろ――薄く笑っている。


 ――ゴウンッ…!


 鈍い鼓動のような音が祭壇から響き、床が震える。

 黒金属の板が左右に割れ、中から黒紫色の光が漏れた。


「な、なんだあれは!」

「気をつけろ!」


 ゼノ団長の命令が響く前に、光の中から黒い何かがせり上がってきた。


 頭の男が狂気じみた笑みを浮かべて両手を広げた。

「ふははっ! 我らが神よ……今こそ顕現せよ!」


 人の形……に見える。だが決して神などではなく悪魔か魔人にしか見えない。身長は四メートルほど。全身が霧のような闇に包まれ、輪郭がゆらゆらと揺れている。牛に似た顔をして頭には二本の角があり、両腕には大きな手斧を持っている。

 赤い二つの光点がこちらを睨んだ。


「黒笛が召喚を……!?」

 聖騎士の一人が絶句した。


 召喚された魔人が、獣の咆哮のような音を上げながら前へ踏み込む。


「来るぞ!! 前衛、盾を上げろ!」

 ゼノ団長が剣を構える。


 ドオン!


 魔人が一歩踏み出すと、石床が砕け、破片が雨粒のように跳ねあがる。


「盾隊、受け止めろ!!」


「はあぁッ!!」


 前衛の聖騎士四名が、大盾を重ねるようにして構えた。

 だが――


 ガギィィンッ!!


 魔人の手斧が一振りされた瞬間、四枚の盾が同時に砲撃を受けたように歪む。

 聖騎騎士たちの身体が数メートル後方へ吹き飛んだ。


「ぐあッ!!」

「くっ……化け物め!!」


「隊列、崩れるな!! 第二列、前へ! 押し返せ!!」

 ゼノ団長の咆哮が響き、第二列の騎士たちが前進して斧の軌道を避けて魔人の体に剣を叩き込む。


 ……が魔人は器用に斧を使い聖騎士達の斬撃を弾き飛ばした。


 キンッ! ガンッ! ギャリッ!


 火花が散り、絶え間なく斬撃の音が木霊する。中には斧の軌跡をかいくぐり、魔人の体に直撃する斬撃もあるが、その斬撃すら弾かれる。


「ダメです! 斬撃が通らない!!」

「いや、微かに効いてる……! あきらめるな!」


 確かに、魔人の動きにわずかな揺らぎが生まれていたが、魔人が止まる気配はまったくなかった。


「グオーーン!!」

 魔人が咆哮し、両手斧を大きく振り上げた。


「全員、伏せろォッ!!」

 ゼノ団長の叫びと同時に、魔人の斧が天井をも震わせる勢いで横薙ぎに振り切られた。聖騎士達は何とか斧の直撃は避けたが――。


 ドゴォォォォォン!!!


 斧の直撃を受けた石壁が一撃で粉砕され、破片が弾丸のように飛ぶ。


「ぎゃあっ!!」


「負傷者を後列に!!」

 ゼノ団長が剣を振り上げ、叫ぶ。

「全員、戦意を切らすな! 相手はあくまで1体だ、必ず限界がある! 押し返せッ!!」


「おおおおおっ!!」


 聖騎士達が一斉に掛け声を上げて魔人へ突撃する。


 その背中を見ながら、俺は拳を握った。


 ――やばいな。聖騎士団が強いのは知ってるけど、この魔人……想定よりだいぶ格上だ。パワーもスピードも聖騎士達とは雲泥の差だ。


 召喚した頭の男が笑っていた。

「ふふ、ふはは……! 我が神はまだ本気ではないぞ……! さあ、もっとだ……もっと暴れよ!!」


 魔人の身体がさらに膨れ、闇の霧が渦を巻いた。


 このままじゃ危険だ。俺が動かないと、まずい。


 最後尾でリーナとカイを連れていた俺は二人に目配せをする。

「魔法攻撃で聖騎士団を支援するぞ」


「「はい!」」


 できれば、リーナとカイが、戦いに加わらずに聖騎士団だけで奴らを制圧できればよかったのだが、どうやら相手が強かったようだ。だが俺が加わり、即座に制圧すれば、リーナとカイは安全だ。

 俺はリーナとカイに援護を頼み、最前線に飛び出した。





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