動き出す謎の影 ~後編(煉ver.)~
・・・・・・・。
教室中が静まり返っていた。
煉もついつい声のした方を振り返った。
遠くで上木 沙弥をふくむ複数の女子が一人の少女を取り巻いていた。
「…上浦さん?」
その一人の少女は上浦 千丈だった。
千丈は地味で内気な少女で、クラスではいるかいないかわからないような存在だった。
また沙弥が何人もの女子を引き連れていじめているのだろうか…煉はそうとしか思えなかった。
しかたがないな…そう思って煉はゆっくり腰を上げる。
そしてつかつかと沙弥の方へと歩み寄った。
「ねえ。いいかげんイジメとかやめてくれないかしら?」
すると、沙弥は驚いた…いや、呆れた感じにも見える。そんな顔をした。
私にこう言われることなんていつもの事のはずなのに。
「はあ? 何言ってるの? いじめてるのは鈴音さんの方じゃない。私たちはあなたにいじめられた上浦さんを慰めてたの!!」
はあ?
それはこっちのセリフだ。ついにこいつら頭狂ったか…前からだけど。
そんなことよりも気になったのは、反抗的なのが沙弥ではなく、その周りの女子らだったことだ。
珍しく沙弥はただこちらを見つめるだけだった。
「ね、ねえ。どういうこと? いじめていたのはあなた達の方でしょ? それで彼女も泣いているんでしょう??」
すると女子は険しい顔をもっと険しくした。
「信じらんない!!」
何がだ!?
「あなたのせいで泣いているんじゃない!!」
…私は基本女子には優しいはずだが…(もちろん沙弥とそこらへんの女子を除く)
「ちぃちゃんの好きな人ばらしたんでしょ!!」
ち、ちぃちゃん…じゃなくて、はあぁあぁあぁあぁあぁ????
そんなくだらないこと誰がするのよ!! あなたたちぐらいでしょ!!
「もう、いいわ!! 行きましょ、ちぃちゃん。」
そう言ってわけのわからない女子達はそそくさと教室を出て行った。
「ほら、沙弥ちゃんもはやく!!」
「あ、う、あ、う、うん…。」
ぼーっとこちらを見つめていた沙弥はハッと我に返って走って行った。
な、なんなの…。
「何なんでしょーね、あの女子達。」
「どーせまた上木だろ?」
「あー、またアイツかぁ。」
男子達は煉の周りを取り巻いた。
皆、沙弥の仕業だとざわめく。
本当にいったい何なのだろう。
わけのわからないことばかりだ。
ただ、ひとつわかったことは…
犯人は上木 沙弥ではない。




