動きだす謎の影 ~前編(沙弥ver.)~
「ねー、沙弥ちゃん。」
沙弥は今日も周りに女子を取り巻いていた。
今日の沙弥のファッションポイント。
ピンクのチェック柄見フリフリミニスカート。頭にはキラキラスパンコールリボン。
まぁ、どんなに着飾ってもどうせあいつがいつものようにド派手にやってくる。
私が金ぴか全身タイツで現れたところであいつが来れば皆の視線は一気にそっちへ向くのだろう。
…それはいいすぎか…。
沙弥は周りの女子との会話を適当にしながら、そんなことを考えていた。
「レン様~!!」
男子が次々にそう叫んでいた。廊下が騒がしくなる。
「…来たわね。『アイツ』が。」
ガラガラガラ。
ドアを開けたのは二人の男子だった。
しかし、入ってくるのは…
鈴音 煉だった。
騒がしかった男子の声が教室に入ってくる。
「レン様、鞄はこちらに置いておきます。」
「レン様、ご機嫌はいかかでしょうか。」
沙弥の周りに女子がたくさんいるように、煉の周りにも男子がたくさん。
「機嫌は…悪くはないわ。」
「そうでごさいますか!! おーい今日のレン様はご機嫌がよろしいようだ。」
一人の男子が他クラスにわざわざ報告に行く。
そして沙弥の周りにいた女子も一人二人と、どんどん煉の方へといってしまうのだ。
いつものことだ。
沙弥はそう思う。
しかし、いつもとは違う一言が沙弥に向けられた。
「鈴音 煉ってホンットムカつくよねー。ね?沙弥ちゃん。」
珍しいことだった。沙弥意外に煉の悪口を言うやつがいるなんて。
まぁ、あれだけお高くとまっていれば敵もたくさんつくるか…沙弥はそう思っていた。
「ええ、ホンット。あれほどムカつく奴はいないわ!!」
「でしょー!! だからさー」
こんな会話は久しぶりかもしれない。
「痛い目見せてやろうよ。」
…はぁ?
いきなりの展開に会話はしばらく沈黙となっていた。
その沈黙の間に沙弥は数年前の出来事を思い出していた。
そう、あの時も沙弥は同じようなことを言っていた。
仲のいい女子を引き連れて、完膚なきまでに叩きのめそうと。
まあ、結果として叩きのめされたのは沙弥だったが…
あの出来事からだった。沙弥のモテない人生が始まったのは。
「…アイツは…やめた方がいいと思う…。」
「えー!! なんで?? 沙弥ちゃんなら絶対のると思ったのにー。」
周りの女子からする沙弥っていったい何なんだ…。
「いやぁ…っていうかなんでいきなり?」
「えー。だってね?」
沙弥の周りにいる数人の女子たちは何かをひそひそと話し始めた。
「ねー、私の前でひそひそするのはやめてくれる? 私、そういうのキライなんだけど。」
そういう点では二人は似ている。
「あ、ゴメン…あのね、煉ちゃん…鈴音 煉がね、ちぃちゃんの好きな子ばらしたらしいの…。」
そんなことかよ。
「ちぃちゃんって、ダレ?」
「あぁ、えっと、上浦 千丈ちゃんだよ。」
かみうら? 聞いたことのない名前だと沙弥は首をかしげた。
「でねー、ちぃちゃんそのせいで朝からずっと泣いてるんだよ。ひどくない? 女の子の好きな子ばらすなんて!! しかもちぃちゃんと煉ちゃんは仲が良かったらしくてね、ちぃちゃんは信じてたのに裏切られたの!!」
は、はぁ…まー確かにそれは少しひどい…カナ…? うーん、というかアイツがそんなことをするだろうか。まあでも、アイツに再チャレンジできるかもしれない。もしまた失敗したとしても、どーせもモテてないんだし。
「OK!! 協力してあげる。だけどこれだけは覚えておきなさい。私は誰かに従うのは嫌いよ。私はその千丈とかいうやつのために協力するんじゃあないわ。だから私に命令はしないで。」
「さ、沙弥ちゃん…アリガトー!! やっぱり沙弥ちゃんは優しいね!! 沙弥ちゃんがいればあんな奴コテンパンだよ。」
女子って怖い…沙弥はわずかながらにもそう思った。
「で? そのか、上浦さん?は、まだ泣いてるの?」
「さ、さぁ…いつのまにかどこかに行ってしまったみたいで…」
「ああの…」
「はあ? いったいどこに行ったって言うのよ。」
「あの、ここに…」
「ホント、どこ行ったんだろうね。」
「ここにいます!!」
・・・・・・。
しばらく沈黙。
教室中が静まり返った。
煉も声のした方を見ていた。
「…上浦さん?」
「そ、そうです。」
沙弥の上浦イメージは音を立てて崩れていった…。
こ、こんな奴をどーしろっていうの~!?
By 沙弥の心の叫び




