098 ラブコメ漫画
「幼馴染と焦がす恋。…初めて聞いたな」
漫画好きはうちのクラスにもいるが、話題には出てきたことがない。
つまり、事前知識なし。…俺は、作品の知識を入れてから読んでしまうタイプだ。名作か、意欲作か、みたいな。自分に合わなかった作品を読むと、時間を無駄にした気分になる。それが好きではない。
でも、アレツさんがおすすめするような作品だ。ここは、信頼しよう。
「おいおい、一巻が終わったぞ」
恋愛描写、なかったじゃないか。主人公は、ヒロインと思われるキャラを憧れの人と表現した。周囲の人物も、恋愛に関して語ってる描写は少ない。
…でも、それはそれとして良い作品だな。
起承転結が整った4コマ漫画は、とても見やすい。その上、笑いのセンスも素朴で心地いい。
あと、主人公がヒロインを憧れの人と言うのもわかる。笑ってる姿が可愛くて、生き方がカッコよくて。
ともかく、次だ次。既刊3巻、読み切ってしまおう。
「あれ、久々に寝不足な顔だ! なんかあったのフェド!?」
「いや、普通に漫画読んでた。…まさか、二周目まで行くとは」
「意外。娯楽に手を出すとは」
「どんな印象だよ。あと、買い食いだって立派な娯楽だ」
「なんて名前の作品? 私も漫画好きなんだぁ」
人の楽しみを事件のように扱う2人とは別に、ティナはまっすぐ聞いてくる。…2人も見習って欲しい。
「…幼馴染と焦がす恋」
「恋愛モノ?! えっ、フェドが?! マジ?!」
「トーナマジで黙って! ここ教室だぞ!」
驚きを隠せてないラヌが目に入る。それ以外にも、ヒソヒソと話すクラスメイト。…悪いか。別にいいだろ。
「…本当に、予想外」
「うーん、読んだことないなぁ」
「なになに?! どこが面白かったん?!」
「漫画の感想を言ってる俺が見たいだけだろ、お前」
「そんな気持ち悪い言い方しないでよぉ。あってるけど」
「合ってるなら余計なこと言うな。あと、注目が痛いからまた別の機会に」
「あたし、読んだことある」
「えっ、ロアも! これまた意外!?」
「…俺も、正直意外だ」
散々2人に悪態をついておきながら、俺も口からそんな感想を漏らしてしまった。
「…あっ」
何かに気がついたように、口元を押さえるティナ。
「ど、どうしたの?! 吐きそう?!」
「いや、ちが…。…うん! そう! ちょっと席外すね!」
…何か誤魔化したな。そう思ったが、詮索はよそう。もしかしたら、ラブコメ作品読んでるの知られたくないのかも。
「大丈夫かな?! 見に行った方がいいかな?!」
「…そっとしとこうぜ。多分、大丈夫だ。あと、もうちょいボリューム落とせ。いつにも増して賑やかだな」




