095 レイピア
「…いや、まぁ、理にはかなってると思うよ。間違いなく」
「すっごい微妙な反応ですわ! レイピア二刀流! そんなに良くありませんの?!」
「…ダサい」
「ですわよね…」
「自覚あったんかい」
「二本を片手ずつで持つかどうかはさておこう。折れやすい武器だから予備があるってのは、間違いなく理にかなってる」
「見た目って、すごく重要だと思いますの」
「否定はしないけど、実用性が勝ってる。それに、どうしても嫌ならハンマーの方を使えば良い。
…ただ、1回目は作戦通り行く」
鳴き声、魔猪か。かなり近い。草の中にいるのが見えた。荒い呼吸だ。…何か、嫌な予感が。
「…動いた!」
普通の個体は、状況を見てから走り出す。だが、そいつは迷いなく動き始めた。…魔物には、ある程度の行動パターンが存在している。されど、ある程度。例外はもれなく存在している。
困ったことに、ただ走り回られるだけで、俺たちにとっては厄介な相手だ。隙作りでも、トドメでも、ハンマーが使いづらい。
今までは、逃げて対処していた。こういう個体とまともにやり合うのは、事故のリスクが高い。…が、今回は距離が近すぎる。爆発魔術も使いづらい。
…元々、逃げるのだってそれなりにリスクがあった。相手の足の方が速いからな。
「やるぞ! 注意は任せろ! トドメ頼む!」
「分かりましたわ!」
俺は魔猪を待ち構える。…ガレスさんとの訓練を思い出せ。魔物も、こちらの動きをちゃんと見てる。
目線を左に、左足を、少し左に出す。すぐに、右へ向かうための動きと風。
魔猪は、ちゃんと引っかかってくれた。…状況を見ずに走り出すような個体なら、ちゃんと引っかかってくれると信じてたぜ。
魔猪は背後で必死に走る。風で加速しても、徐々に距離が縮まっている。
…しまった、注意は引けたが、隙を作れない。
「フェドさん! こっち! 駆け抜けて!」
声が聞こえた。大回りでその方へ向かう。…こっちってどっちだ? アレツさんが見えない。
…なるほど、台車の裏か。壁にして身を守り、レイピアで仕留める。それなら確かに勝算がある。
俺は走る勢いのままレイピアを手放した。ちょっとでも魔猪の邪魔になれば良い。あと、俺自身が走るのにも邪魔だ。
…父さんには悪いが、元々こういう扱いの予定だった。
「セヤァッ! …あっ」
台車の横を駆け抜けた。魔猪との距離はかなり詰まっていたが、少なくとも俺は刺されていない。
「フェドさん! 私のレイピアが折れちゃいましたわ! …じゃなくて、まだ魔猪が後ろにいますわ! 深く刺さってますが、止まってません!」




