092 負傷退場
「…まさか、魔猪をクッションにすることになるとは。…意外と心地いいな」
台車に乗せられた魔猪の上で、俺は空を見上げていた。
「軽い外傷なら私たちの治療魔術で治せますが、捻挫は後遺症が残る可能性がありますからね…」
「自分の足場についてよく考えてなかったのは反省点だな。崩した地面に、自分が足を取られるとは。
…方向性は間違ってないはず。他に、良い作戦は、ないかなぁ」
空が綺麗で、揺れが心地よくて、まぶたが重くなっていた。
先に受付所に戻っていたアレツさんを見つけた。…なんというか、ちょっと話しかけづらいな。
いや、流石にこのまま帰るのは違うだろう。ちゃんとしよう。
「その、アレツさん。ただいま戻りました。…えっと、思いっきり寝てたようで。お恥ずかしい」
「お帰りなさい! 親切な兵士さんが途中手伝ってくれたので、お気になさらず! もう、足は大丈夫でしょうか?」
「…ああ、治療院ですぐ治った。そろそろ、中級治療魔術の資格取りに行かないとなぁ」
「難関資格! 私には、遠い話ですわね…」
「魔素の消費量が多いとはいえ、あった方が絶対楽だからな。ロアが、その、身内に持ってるやついるし」
受付から、こちらを呼ぶ声。どうやら、査定が終わったようだ。
「結構、貰えるものなんですね」
「ものすごくキレイな状態で持ち運ばれてきたので。…あと、初参加の学生さんには、こっそりサービスしてます。静かぁに、受け取ってください」
あのミンチを持ち込んだらどんなリアクションをしてたのか、少し気になってしまった。…多分、やらない方がいいんだろうな。揉め事のタネになるかもだし。
「じゃあ、アレツさん8で、俺は2で分けよう」
「…え? こういうのは半分ずつじゃありませんの?」
「…ぶっちゃけ、俺、帰り寝てただけだし。倒したのも3体だけだ。5割ももらえない。…というか、もらいづらい」
「いえ、半分ずつです。私が決めました。お互いに役割をこなしたのです。半分以外の回答はあり得ませんわ」
「そう言われても…」
「それなら、次は半分に納得ができるようになってくださいませ」
「…分かったよ。そうする。…アレツさん、次いつ参加するんだ?」




