090 風使い
「アレツさんは、ソヒューフの生徒ですよね。序列で言うと、上から二番目と聞きました。
その、校風とか詳しくないんで、色々聞いてみたいです」
「はい、もちろんお答えします!
基本的には他魔法学院と同じ、魔法の訓練を主とする学校ですわ。ただし、ソヒューフは実戦を見据えた、独自の戦闘スタイルを確立することを、重要視しています」
「…それで、このデカいハンマーですか」
「恩人に得物を運ばせてしまうなんて、一生の不覚ですわ…」
「ちゃんと体を鍛えないとなって、最近思い始めたので。それに、デカい台車に乗っけてるだけです、気にしないでください」
魔物は食えるので、運べるようにするのが基本らしい。運んだ数で、報酬が決まる。
「…その、アレツさんの魔法って」
「しぃ。…静かに」
草を分ける音。…風の音じゃないな、伸びた草がそいつの体を隠してたのか。
魔猪だ。こうして戦うのは、久々だな。
こちらと目があった。…それなら、炸裂弾の用意だ。爆発魔術は過剰火力だし、連携に難がある。
「お任せくださいませ!」
ハンマーを手に取ったアレツさんは駆けていく。魔猪に対して斜め移動で近づいていく。
…じゃない、俺も動かないと。注意を引いて、アレツさんが動きやすいように。
魔法の風を背に受けて、魔猪に向かって一直線に走る。
「こっちだ、えっと、うすのろ!」
声と目で威嚇しながら、横を通り抜ける。魔猪の突進は破壊力満点だが、走り出しの加速が弱い。
だから、まとわりつくような動きで、隙をつくる。
「はあッ!」
上段からの振り下ろし。それは、異様に速かった。風の音だ、自然のものでも、俺のものでもない。
…潰れたそれは、とても生き物だったものとは思えなかった。…これは、金になるのだろうか。




