009 魔族3
呻き声、泣き声。意味をなさないそれを発していたかと思えば、次はごめんなさいと宣い始めた。
俺の魔法は、後悔や他者からの暴言など、本人が嫌だと感じるだろう記憶を大量に引っ張り出して脳内で漂わせるもの。
人間、いや、魔族にも言えるか。そもそも、心が壊れやすいやつというのは、皆真っ向から向き合おうとする。
"強い"と評されるやつに多い特徴だ。そういうやつほど、一つ一つまともに受け止める。
だからこそ、情報の物量攻撃によって簡単に壊れる。そういうのに耐えられるように心は作られていない。
ちなみに、向き合おうとしないやつには、そのことを責める言葉を俺が耳元で囁く。完全に向き合わないというのも、実は難しい。
対策は開き直ること。これが一番合理的で、一番醜い。
草の揺れる音が聞こえた。それが、風によるものではないと確信できた。
…13メートルぐらいか。騎士君は、俺に気づかれないように距離を詰めていたようだ。
カラヒは、死んだか。…仕方ない、しばらくは覚えていてやるぜ。お前ほど性格が悪くて、気が合った奴はなかなかいないだろうからな。
お嬢さんの意識を魔法で刈り取り、ひょいと背負って森の中へ。風使いでなくとも、人質ありは追いづらいだろう。
仕上げは魔物の操作。魔法の使いすぎで既に魔法体力がギリギリなので、ハッタリ程度に。
「くるならこいよ、騎士君。気づいてるだろうが、俺が魔物を操ってたほうだ。
森の中じゃないと力を発揮しない奴は、村を攻めるのに使わなかった。お前ならこの意味がわかるだろう?」
「ごちゃごちゃと。追って来んなと素直に言ったらどうだ」




