087 風魔法2
「広場で訓練ですか」
「ここからアルネス家への移動だと、寮に戻るフェド様にとってはあまりに回り道。今回は木刀を使わない、ですから広場でも問題ないでしょう。
ただし、子どもたちには気をつけて」
「剣を使わずに、ですか」
「そうです。…せっかくです、フェド様。何をするか、当ててください」
「…ずいぶんと急なクイズですね。
そうですね、最近は効率的な足捌きの訓練を重点的にしてました。ここ2週間は色々あってアレでしたが、かなり褒めてもらえていました」
「ええ、筋は間違いなく良い。少なくとも、近距離戦に向いていると思います」
「…すみません、ちょっと分からないです」
「では、実践を。フェド様、私を懐に潜り込ませないでください。方法はなんでも良い」
…広場で楽しむ子どもを巻き込まない程度に、か。
5メートルほどの距離からの突進。…訓練したての頃より、見えるようになった。
右に動く。目線が一瞬そちらに向いたので、そう思った。だから、足の動きを見てから避ける動作。
「がぁッふ!」
吹き飛ばさない程度に、でも衝撃を全て0にはしない程度に、タックルを食らった。動きは、完璧に読まれていた。
「目線で、私の動く方向を予測した。そして、右足がそれを実行するように動いたのを見た。だから、動きに合わせて、回避。
よく、動きを見ている。…だが、魔物さえも、相手の動きを見る。騙せるように、騙されないように、精進してください」
基礎はある程度教えたから、応用ってことか。…よし、思いついたことを試してみよう。
「もう一度、頼みます」
俺の方から5メートル距離を取る。そして、ガレスさんの突撃。
今度は、左だな。目線がそちらに一瞬動いた。
だから、かなり早めに逆にステップ。もちろん、もう一度動ける余裕は残したタイミング。
少しでも動揺を誘えたら十分。ガレスさんに効かなくても、ほかのやつには効くかもしれない。
しかし、それを待っていたのか、ガレスさんは加速した。…もう1段階、隠していたのか。一度も見たことがない速度。
だが、ギリギリ動きは追える。
合理的に言えば、勢いを殺さずにそのまま体を流すのが正解。ガレスさんの加速で、ステップの余裕があまりないから。
だから、俺はその方向に目線を置いた。
そして、足の筋肉と魔法の横風で逆にステップした。
ガレスさんは、それと同時のタイミングで、俺が動いた方へ突進していた。…完全に、読まれていた。
「いったいなぁ…」
「…ふむ。少し外されましたね。体捌きを風魔法で強化。良いアイデアです」
「トーナが、友だちが、かけっこの時に使ってたので、できると思いました」
「良い友人を、持ちましたね」
「…ええ、ほんとうに、そう思います」




