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人魔の世界  作者: 道草ノ跡
スーベル魔法学院編

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86/129

085.5 かっこいい、と

 昨日の一件から、どうにもギクシャクしてしまってる。…大体は、私が話をややこしくしたせいなんだよな。

 とにかく、ひとつずつ、私はやるべきことをちゃんとやらないと。


「ティナ、ちょっと時間もらうよ」


「う、うん! トーナちゃん!」






 昨日ぶりの屋上。空は曇っていて、春の終わりにしては肌寒い。


「私は、というか、私もかな。ずっと、炎はかっこいいって思ってたし、水にすっごく憧れてた」


「そう、だったの」


 ティナは複雑な表情をしていた。その中に、ちょっとくらい嬉しさが混ざってたらいいなと思いながら、続ける。


「風が嫌だからってだけじゃないんだ。それは、間違いない。

 水だったとしたら、炎かっこいいって思ってた。ティナと同じ炎だったら、水を羨ましく思ってた。あっ、もちろん土にも良いところはあるけどね。

 だから、多分、隣の芝生は青く見えるってだけの話なんだと思う」


「その、私は、風もかっこいいなって思ってた」


「…えっ、すごい独特なセンス。正直すごい微妙だよ、風。できることは意外とあるけど、致命的に威力低いし」


「だって、トーナちゃんも、フェド君も、かっこいいから」


 ちょっとした冗談かなと、つい思ってしまった。

 でも、本気の表情だったし、何よりティナは人を馬鹿にするような冗談は言わない。…少なくとも、こういう真面目な場面では。


「…うん、私も、ティナを見たから炎をかっこいいって思ったのかも」


「なら、一緒だね、トーナちゃん」


「一緒だ、ティナ」


 照れを誤魔化すように、一緒に笑った。…あっ、忘れてた、本来の目的。


「改めて、昨日はごめん。

 かっこいいが、羨ましいになって、いつの間にか私とは違うになってた。最低なことを、言っちゃった」


「私も、ごめんなさい。

 喧嘩した後って、どうすればいつも通りになれるか、分からなくて。怒ってたわけじゃないの」


「…すごく怖がらせたなって思ってたから、まさかそう来るとは、びっくり」


「…もう。その、何か、コツみたいなのってないのかな?」


「そうだなぁ。…多分、こういうのって、謝る側がいつも通りじゃないことの方が多いとは思う。

 だからねぇ、友達と一緒にいたいなら、引っかかりを残さないようにする。それが大事なんじゃないかな!」


「遺恨を残しちゃわないように、ってことかな」


「多分そう!」

 

 話していたら、日の光が雲の隙間からのぞいてきた。それは、夏の始まりに近い熱だった。

 111話まで書いたあとに084話周辺を読み返し、ティナとトーナの間にもう一場面あった方が自然だと思ったため追加しました。

 話数調整の都合上、085.5話として投稿しています。

 これからも、人魔の世界をよろしくお願いします。

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