085.5 かっこいい、と
昨日の一件から、どうにもギクシャクしてしまってる。…大体は、私が話をややこしくしたせいなんだよな。
とにかく、ひとつずつ、私はやるべきことをちゃんとやらないと。
「ティナ、ちょっと時間もらうよ」
「う、うん! トーナちゃん!」
昨日ぶりの屋上。空は曇っていて、春の終わりにしては肌寒い。
「私は、というか、私もかな。ずっと、炎はかっこいいって思ってたし、水にすっごく憧れてた」
「そう、だったの」
ティナは複雑な表情をしていた。その中に、ちょっとくらい嬉しさが混ざってたらいいなと思いながら、続ける。
「風が嫌だからってだけじゃないんだ。それは、間違いない。
水だったとしたら、炎かっこいいって思ってた。ティナと同じ炎だったら、水を羨ましく思ってた。あっ、もちろん土にも良いところはあるけどね。
だから、多分、隣の芝生は青く見えるってだけの話なんだと思う」
「その、私は、風もかっこいいなって思ってた」
「…えっ、すごい独特なセンス。正直すごい微妙だよ、風。できることは意外とあるけど、致命的に威力低いし」
「だって、トーナちゃんも、フェド君も、かっこいいから」
ちょっとした冗談かなと、つい思ってしまった。
でも、本気の表情だったし、何よりティナは人を馬鹿にするような冗談は言わない。…少なくとも、こういう真面目な場面では。
「…うん、私も、ティナを見たから炎をかっこいいって思ったのかも」
「なら、一緒だね、トーナちゃん」
「一緒だ、ティナ」
照れを誤魔化すように、一緒に笑った。…あっ、忘れてた、本来の目的。
「改めて、昨日はごめん。
かっこいいが、羨ましいになって、いつの間にか私とは違うになってた。最低なことを、言っちゃった」
「私も、ごめんなさい。
喧嘩した後って、どうすればいつも通りになれるか、分からなくて。怒ってたわけじゃないの」
「…すごく怖がらせたなって思ってたから、まさかそう来るとは、びっくり」
「…もう。その、何か、コツみたいなのってないのかな?」
「そうだなぁ。…多分、こういうのって、謝る側がいつも通りじゃないことの方が多いとは思う。
だからねぇ、友達と一緒にいたいなら、引っかかりを残さないようにする。それが大事なんじゃないかな!」
「遺恨を残しちゃわないように、ってことかな」
「多分そう!」
話していたら、日の光が雲の隙間からのぞいてきた。それは、夏の始まりに近い熱だった。
111話まで書いたあとに084話周辺を読み返し、ティナとトーナの間にもう一場面あった方が自然だと思ったため追加しました。
話数調整の都合上、085.5話として投稿しています。
これからも、人魔の世界をよろしくお願いします。




