077 中級試験5
心臓の音が、嫌ににぎやかで腹が立つ。…このままじゃ、ダメだ。あとほんのちょっとだけ、落ち着け。
「フェド。…あー、肩でいいや、手を置いててくれない?」
「…?? まぁ、分かった」
壊れ物を机に置くように、彼は左手で私の右肩に触れた。
「…あんまし、効果ないや」
「…えぇ。なんかよく分からんまま無能扱い…」
肩の上にあった感触が消えた。…なぜか、あれだけうるさかった心臓の音が、今になって静かになった。
「ありがと、フェド」
「…お、う?」
困惑を隠せない表情が、笑いを誘ってくる。
さて、魔術の発動。手のひらに魔素のピースが乗っかるような感覚と、魔素がジリジリ削られていく感覚。
焦らない、焦らない。最初の3秒は感触だけに集中しろ。
…やっと、見えた。
しばらくして、トーナの魔術はだいぶ安定してきた。
ロアを連れてこようと訓練室を出ると、そこに本人が立っていた。どうやら、ずっと様子を見ていたらしい。
面倒見の良さは、昔から変わらないようだ。
「…まさか、仕上げる方に舵を切ってたとは」
「悪い。多分、ロアの想定とは違ってた。それでも、やる価値はあると思ったし、そうするしかないとも思った」
「謝る必要はない。あたしも、完成させてから休憩が一番理想的だと思ってた。
トーナも、謝る必要はない。…よく、頑張った」
「それでも、改めて、ごめん! 心配させて、いじけちゃって、ほんとうに、ごめん!」
ちゃんと謝って、それで、顔を上げたトーナは笑顔だった。一瞬、一件落着のムード。
「…いや、ティナにはきちんと謝っておかないと。だいぶ心配させたじゃないか」
「そうだった! まだ学校にいるかな…。いや、居ないならティナの家に行こう! ちゃんと顔見せないと!」
「…どのみち魔素はほとんど使い切ったしな。休憩がてら、顔見せてこい」
「二人も、行こ! みんなで行った方が、ティナも嬉しいよ! 多分!」




