007 魔族1
「無事なやつは、これで、これだけで全員か」
「…ああ、もう全員見つかった」
五体満足な村人は、俺たち3人を含めても6人しかいなかった。他の5人は大怪我。
そして、残り10人と行商人は皆、帰らぬ人となった。建物に押しつぶされたのが大体の死因であり、あの魔法が直接の死因というわけでもない、はずだ。
「君たちは、国に惨状を伝えてくれ。村長の加勢は俺たちに任せろ」
村人たちは、農具や剣を持って森へ向かった。
「…行こう。俺たちの治療魔術じゃ、大怪我は治せない。どのみち助けを呼ぶ役目は必要だ」
二人は、小さく頷いた。色々と気になることは多い。それでも、ここは役割と己の命を最優先にしなければ。
どがんと、村の方から轟音。今度は、威力も、音も、光も、全てがおんなじに感じた。
「お…ねぇちゃん」
「大丈夫。そろそろ国の、魔物の討伐圏内だから、安心して。大丈夫」
「そうじゃ、なくて、お姉ちゃん」
「ロア。今は…持ち堪えてくれ」
「……うん。そうだよね。ごめん、二人とも」
徒歩での移動。問題は、森が間にあること。視界の通りが悪く、国も森の魔物は討伐しない方針。
小さいし、外を回ってもそこまで時間は変わらない。
「迂回、するか」
「まちな、そこのお嬢さんを置いていってもらおうか。護衛役君」
背後から、声。そいつはロアの方を指さしていた。
おっさんとしか言えない顔、背中のでかい羽、子供のような小柄な体格。
足音がなかった。ふざけたことに、その後ろの羽で飛んできたのだろう。間違いなく、魔族だ。
「悪いけど、頼まれ事があってね。二人を国までちゃんと送らないと」
「じゃあ、俺が代わってやるよ。騎士様ってのは強いやつがやるべきじゃないかなぁ?」
出発の時に持たされた、村の鍛冶屋自慢の剣を構える。
「俺はこいつの足止めをする。
ミラ、ロアを頼んだ」
魔族から目を離すわけにはいかなくて、振り返ることすらできなかった。
「フェドさん。ぜったい、追いついてね」
ロアの声は、聞こえなかった。
「行ったよな?」
「ああ、行ったぜ」
睨み合いから、数十秒。お互いに一切動かず。
それにしても、ニヤケ面がとてつもなく腹が立つ。だからこそというか、冷静になるために疑問をぶつける。
「あんたか。ロアの魔法を盗んだのは」
「よく気づいたねぇ。大正解だよ」
冷静になりようがない。
「どうやってそんな…。…いや、なぜ、ロアを追う」
「魔族ってのはね、魔素によって生まれ、魔素によって生きる。人間ほど効率的に魔素を生み出す生物はいないからね。今の人間はそんなことも知らないのかなぁ?」
「おいおい、ロアを追う理由になってないぜ」
「言わないと分からないかぁ。あのお嬢さんが結構すごいことは、隣にいた君の方がよく知ってるんじゃないのぉ?」
頭が冷える感覚。致命的な見落としを見つけてしまった。
「単独犯か?」
もとよりニタニタとしたニヤケ面の口角が、さらに大きく上がる。
「うんうん、やっと気づいたかぁ。お嬢さんたち、大丈夫かなぁ?」
彼女たちの方へ、俺は首を大きく回す。魔族は、それと同時にあの魔法を発動した。




