069 答え
緊張で調子を崩す。言葉だけ聞いたら、確かにティナらしい話だとは思った。
それでも、何かがおかしい。
明らかに今回の試験だけ出力が下がり過ぎている。緊張している彼女でも、ギリギリ突破できる範疇だったはずだ。
炎の炸裂魔法使いは、既にあらかた上位クラスに入っている。今回の戦いは、炎の炸裂魔法使いはティナを含め二人。上位に入れる人数と同じ。
トーナが指導したんだ。勝てた勝負のはずなんだ。
「フェド君、どうしたの? 二人で話って」
「単刀直入に聞く。…手を抜いたな?」
「な、なんのこと…で…しょう…か」
「怒りたいわけじゃない。何か理由があるなら、力になりたいってだけの話だ」
「…その。はい…。手を、抜きました」
嘘は言っていないようだった。
「理由を、聞いても良いか?」
「…その。クラス、みんなと、別々になるのが、怖かった…です」
「そうか。それなら、本当に、良かった」
それは、思考を介することなく出た言葉だった。
「良かったって…」
「誰かに脅されてたとかじゃなくて、本当に良かった。
正直、手を抜いてたんじゃって気づいた時、1番に思い浮かんだから。ほんとうに、良かった」
呆気に取られていたティナが、俯いた。彼女も、涙を見せるのは好きじゃないのだろう。
「ごめん…なさい」
「気にすんな…は、トーナに悪いか。
そうだな、一緒に謝ろう。大丈夫。あいつなら許してくれるよ」
「ごめんなさい。トーナちゃん!」
「ううぇ?! 急にどうしたのティナ?! えっ、お腹痛いの?! 食べ過ぎた?!」
「そんなわけあるかい。あと、真面目なテンションで頼む」
「おお、う…。…うーん、謝られるようなことに思い当たりがない…」
「あの…その…。入れ替え戦で、わざと負けたの! ごめんなさい!」
「そうだった…の?」
これってドッキリ? みたいな目でこちらをみる。首を横に振ってから、俺も頭を下げる。
「俺も、本人の意思をなぁなぁにしたまま、トーナに引き継ぎをした。ごめん」
「…ちょっと待った。多分フェドが1段階飛ばしてる! 私まだ、わざと負けた理由聞けてない!」
「その、みんなと、クラス…離れたくなかった…から…です」
すごく、納得いったような顔。…遅れて、頭を抱える。
「…うわぁ。全然、気がつかなかったや…。…ごめん! 私、勝手に上位行きたいんだなぁって思ってた!」
「で、でも、そう勘違いさせるような言い方したのは私で! 元はといえば、私が勝手にしたことで!」
「いやいや、そもそもそういう風に導いてしまったのは俺の責任で!」
「悩んでるの全く気づかなかったぁぁ!」
「…三人とも、賑やかすぎ。
真面目な話みたいだし、聞かない方がいいと思って距離取ってたのに、筒抜けだったんだけど」
「「「ごめんなさい…」」」
「そろそろ飽きたでしょ謝るの…。
…今話すべき問題は、今後どうするかでしょ。私たち三人が中位に居続ける限り、ティナの上位入りはわだかまりが残る結果になる。
ある意味、私たちがいちばんの障害になってる」
「それ…は…」
顔を青白くしたティナは、小さくそう漏らす。
「ごめん、ティナには気分良くない言い方だった。…それでも、私たち三人にとって、これは大きな問題」
沈黙。…解答はある。だが、口を開くには、覚悟のための時間が必要だった。
「…俺たちも、上位を目指す。もとよりそのつもりではあったがな」
「それしかないと思う。じゃあ、フェド、具体的にどうするつもり?」
ロアは、そう問うてきた。
「…中級魔術だ。爆発魔術なら、可能性はある…と思う」




