062 師匠
連れ出されて、10秒。トーナは右手で頭を押さえつつ、大きくため息を吐いた。
「…さっきのフェド、めちゃくちゃ感じ悪かったよ」
「感じ悪かった? それって、どういう」
「まず、ありがとうでしょ。…いや、ありがとうじゃなくても良いか、どう致しましてとか」
「…えっ、ほんとに何が?」
「ティナ、感謝してたじゃん。フェド君の、おかげだよ…って!」
あんまり似てないモノマネだった。いつもの俺なら、多分笑えてたはずだ。
「そう、いえば」
「…教えは、するよ。ティナにも頼られたからね。
でも、ティナにとってのフェドは師匠なんだ。怖い思い、させちゃダメ」
「…怖い、…か。その、ごめん。あと、ありがとう」
「…ごめんの方は、ちゃんとティナにも伝えてよ。悪気はないって、気づいてるだろうけど。私もね。…あー、呼んでくるから待ってて。心の準備、いる?」
「大丈夫。それに、こういうのは早く終わらせるに限る」
「…一瞬最低な人に見えたよ。もう、言葉選びはちゃんと勉強してよ、ほんとに」
「ごめん! 教えるのが嫌になったとか、そういうわけじゃないんだ!」
「うん、フェド君ならそうだよなぁって、わかってた」
「だとしても、本当にごめん」
ティナは少し視線を落として、うーんと唸った。
「…その、師匠って呼んでも良いかな? よくよく考えたら、私もちゃんと師匠扱いできてなかったなぁって」
「…その、俺で良ければ」
「そんなバカな話あるぅ!?」
右手でお腹を抱えて、頭を机にコンコンぶつけるトーナ。頭おかしくなりそう、と言いながらひたすら笑い続けてる。今日はずっとこんな感じ。
ティナは教室に居づらいのか、授業が終わるたびに出て行って、次の授業開始直前に戻ってくるのを繰り返してる。
ロアは無表情で言った。
「照れた顔で、…その、俺で良ければ。だけを聞いたら、勘違いしても不思議じゃないかもね」
「ははっあ、すっげぇ似てる!」
「笑えねぇよ…なんかすごい情けないやつみたいじゃん…」
「逆告白、アリだな」
誰だ今の。




