059 軍の会議
「本題に入る前に、改めて。先日の魔族による攻撃について、情報をまとめたいと思います」
「えー。まず攻撃前の段階で、北及び南の森に、およそ1ヶ月かけて魔物が集められていました。
そして、攻撃当日。
北の森から大量の魔物が特攻。こちらは操作による結果と見て問題ないでしょう。
その上、魔族の転移魔法。トーナ・パーナからの情報と重ね合わせると、一定範囲内の対象を強制的に転移させるものと思われます。
東門から、魔族の単体強襲。鎧を真正面から破壊できるレベルの大剣使い。彼の役目は、おそらく陽動です。少年フェド・アルネスと、ガレスという年寄りによる証言です。
以上、北と東への侵攻が同時に行われました。
そして、南の森は、攻撃終了後魔物が大量に森から出て行きました。こちらは操作によるものかは不明です」
「ご苦労。さて、本日の議題。次に同じような侵攻が始まった場合への回答だ。意見があるものは、聞かせて欲しい」
しんと、静まり返る。
「…単純に、情報不足な上で力負け。それ以外の回答があるか?」
「それはそうだが、また来た時に全く備えないというのも違うだろう」
1人、自信ありげに手を挙げた。
「二つの森を燃やすってのはどうですか? そうすれば、ここら一帯はほとんど平原です。潜伏先から門までかなり時間がかかる」
「…言われてみれば、と正直思ったが問題はある。薪や山菜まで全部塀の中で賄うのには限度があるということだ。今ある平原も、長年森を少しずつ伐採してきた結果だと言われている」
「じゃあ、片方だけ。そうすれば、残った方だけ警戒すれば良くなる。もちろん、魔物に関してはですが」
反対意見は出なかった。その代わり、うんうんと唸り出す者が増える。
「…魔物の掃討をする。というのはどうだ。現状でもある程度ちゃんと殺しているが、ゼロに近い状態を維持する。
学院と連携して、訓練の名目で魔物退治をさせれば、軍の人員を割かずに済む。学生目線でも、実戦経験ってのは侮れないと思う」
「それも、悪くない。どうせ絶滅させても漂う魔素からまた産まれてくるんだ。生態系が崩れる可能性もあるが、やる価値はある」
「もう一つ。北門で魔法使いを募集した時に名前の記入を頼んでいましたが」
その紙を、机の上にバンっと置く。あまり大きな紙ではないため、見えない人が大半だ。それでも、興奮のあまりそのまま続ける。
「ここに、ララという名前が書かれています。この国に、ララという名前の人間は三人いますが、全ての人物に不参加のアリバイがありました」
「…転移の魔族あたりが紛れていたか?」
「まぁ、魔物の引き寄せ役の可能性もありますがね。
なので、次回からは身元を確認できない人間を戦力として組み込むべきではないと思います」
「ふむ。多少面倒だが、事前に予備登録させれば不可能ではないな」
「あとは、そもそも魔物が森に集まっているなら、先制攻撃してしまうってのはどうだ?」
「正直あまり考えたくないな。そもそも視界が通りづらい上に、魔猿が厄介すぎる。
その上、敵の数も把握しづらい。投入する人数を間違えれば、部隊ごと全滅する。攻めるってのは、基本的に戦力がある側の発想だ」
「そう言えばなんですが。転移魔法の対策はしないんですか?」
「…逆に、どう対策しろというんだ。詳細が全くないんだぞ」




