↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魔の世界  作者: 道草ノ跡
スーベル魔法学院編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/127

054 帰還者

「久しぶり! ロア! ティナ! フェド!」


 ベッドに腰掛けて、右手をブンブンと振り回し、輝く笑顔。少しずつ薄れていた記憶と、完璧に合致した。


「トーナちゃん! トーナちゃん! ずっと、ずっと心配で、もう、一生、会えないって…!」


「よしよし。大丈夫、私はここにいるよ」



 ずっとそちらの方をただ眺めていた俺に、彼女は話しかける。


「フェドも、ひどいクマだねぇ。訓練のしすぎかな?」


「…むしろ、そっちが元気すぎるんだよ。ほんとうに」


「無事で良かった」


「この状況を徹頭徹尾無事と言って良いのか、何というか…。まぁ、何はともあれ国には戻って来れたよ!」


「ごめん。皮肉のつもりではなかった」


「分かってるよ。さてはなんかあったなぁロア。変に神経質になりすぎると疲れるよ! 楽に行こう!」


「…誰のせいだと」


「…あちゃー私が原因でしたか」


 


 そういう風に軽く話して、時間が来た。今まで例のない帰還に、国としても情報を取らないわけには行かないのだろう。

 それでも、少しだけ時間を作ってくれた。トーナの要求を通してくれたらしい。








「…ここ、どこ」


 黒い煙がずっと漂っているような、濁った景色。水の国ではないだろうなと、それだけで確信できた。



「魔族の大陸へようこそ! 魔素いっぱい持ってる人は大歓迎! ああ、安心して良いよ、ちゃんと殺さないように、生かしてあげるから!」


 高らかに、悪趣味に笑ったそいつの言葉の意味を測りかねる。ただ、碌でもない状況なのは確かだ。

 落とし穴…というより、塀で囲われた空間かな。学院の体育館と同じぐらいの広さ。囲いの材質はかなり硬そうだ。少なくとも、私には突破できないだろう。


 周囲には結構な数の人間がいる。配置から察するに、私とその周りにいた魔法使いたちが、そのまま丸ごと連れて来られたような感じだ。


 ティナは、いない。


「…1人目」


 魔族に触れられた魔法使いは、力が抜けたように倒れ込む。


「奴の手…。…いや、他の魔族にも触れられるな! わざわざ囲いの中にいるということは、殺さずに制圧できる能力があるということ、警戒しろ!」


 軍の魔法使いがそう叫ぶ。


 囲いの中にいる魔族は10人ちょっと。そして、塀の上に立っているのが20人ちょっと。


 魔法使いの1人が、迫り上がる土の上に立っている。おそらく、土魔法で無理やり高さを稼ぎ囲いを出るのが目標。

 

 ただ、途中で急に魔法が止まった。


「はぁい、私の魔法で止めてるよー。捕まえるなら今だよー」


「もうちょい早く止めてくれよ。誰があそこからあいつを下ろす」


「あー。確かにー」


 嫌に軽い空気、手慣れていると確信した。…情報が次々と入って来て、しかも信用できないものも多い。

 でも、逃げないといけない。それだけで十分と思えた。

 私が囲いを飛び越えるには、道具がいる。倒れ込んだ、最初の犠牲者。サイズは足りてないだろうが、彼のローブで何とかするしかない。

 


 無理やり脱がせる。…なんか、いけないことをしてる気分だ。


「うん? そこのお嬢さん、何をしてるのかなぁ?」


 私の行動を察知してか、地上の魔族が近づいてくる。

 熱風が、私の横を通った。魔族に向かって、熱を伴った赤い光線。


「行け!」


「ありがとう!」


 両手でローブを広げて、空へ掲げる。下から強く風を吹かせた、風魔法式の即席気球。無理やり上に飛び上がって、まだまだ上昇。


「はいはい逃さないよー」


 急に魔法が使えなくなった。風の流れはまだ残っていて、塀の高さはギリギリ越えられた。でも、塀を越えるための横風が出せない。宙に留まれるわけもなく、ゆっくりと落ちていく。

 魔族側は、そんな私を放っておく判断。戦闘中にそこまで気を回す余裕もないようだ。



「構えろ! 嬢ちゃん!」


 何かが、斜め下から私を押し上げた。一瞬魔族からの攻撃と勘違いしたが、それは水魔法。水の大砲が、私の塀越えを助けてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。