053 新たな日常
静かな屋上だ。賑やかなやつが消えてから、1ヶ月が経った。
あの日攻めて来た魔族の目的は、魔素が比較的多い魔法使いの誘拐だと結論付けられた。
そう言われたって、北の魔物に対処していた人たちを一気に20人近く連れて行かれては、理不尽だと叫びたくなるのも必然というもの。
3人で集まると、トーナの顔がどうしても浮かんでしまう。それでも、こうしていると、いつかふっと現れるのではと思ってしまう。
空は、腹立たしいほど綺麗だ。まるで、何事もなかったかのように。
学院は、少しずつ元の雰囲気に戻りつつある。あの日の悲劇を乗り越えたのか、向き合って進むことに決めたのか。
俺たちには、もう少し時間が必要みたいだ。
「助けに、行かなくちゃ…!」
「馬鹿。過去にあっちに行って帰って来たやつはいない。ミイラ取りがミイラになるだけ」
「少なくとも、俺たちじゃ無理だ。ここは、堪えよう。…頼む」
「でも…! 捜索隊は作られなかった! お母さんも募集したのに、人も食料も集まらなかった! 国なんて、すぐに諦めた!」
「今まで帰って来た人がいないんだから、仕方ない」
「ロアちゃんには……。ああ! もう!」
その日の2人を責める気にはなれなかった。頭が冷えたのか、お互い別日にしっかりと謝ったらしい。
しかし、あの日から2人の会話はずっとぎこちない。ギクシャクとした雰囲気は、とてもしんどい。
それでも、昼休みは3人で集まる。この空気をひっくり返せる力が、俺にあれば良かったのに。
帰ってきてくれよ、トーナ。お前が帰ってくるだけで、きっと全部が解決するんだ。
ガチャリと、屋上の扉が開いた。目線はすぐそこへ吸い寄せられる。
望みの人物ではなかった。
「3人! 今すぐ治療院に来てくれ!」




