052 狩り
「どうやら、任務は終わったらしい」
「それは、どういう意味だ」
「怒る必要はない。ガレスと言ったな。お前は役目を果たした。そういう話だ」
合図のようなものがあったというのか。あったとしたら、彼らの魔法だろう。
「お前たちの目的は何だ。お前が陽動なのは分かるが、一切街の制圧をしないのはあまりに不自然だ」
「…まぁ、どうせすぐ分かることだな。
要するに、狩りだ」
「ティナ! どうして前線に!? …いや、良いところに来た! その人を頼む! 腕を潰されてた! だから、私がさっき切断した! 治療魔術で傷口を軽く塞いで、門の方へ! 魔物は任せろ!」
「は、はい!」
ハンカチを純水魔術で軽く洗ってから傷口周りを拭き取った。そして、治療魔術で傷口を無理やり塞ぐ。
切り口がキレイだったので、かなり早く終わりそうだ。
「通してたまるかぁ!」
地に手をついたサテファ先生は、土魔法使い。土の地面から、真上へ突き刺す三角錐を生成している。
短い間隔で、連続して使えるわけではないようで、剣でもう一体に対処している。
土の剣だった。軍に支給された剣は、すでに折れてしまっていたのだろう。
「前線! 気合いを入れろぉッ! 後衛の魔法使いが力を振るえるように、魔物を通すなぁッ!」
「応急処置は、終わりました! その、あの、安心してください。あとは、自力で、治療師さんのところまでお願いします。私も、戦わないと」
指を差したのは、治療師たちがいる門の内側。
遅れて、違和感。少し腕を下げて、それでも理解したくなくて。
恐怖で腰が抜けたのだろう。さっきまで後ろで魔法をひたすら打ち出していたうちの1人が、地に腰掛けていた。
1人しか、いなかった。
その日は、訓練棟も閉鎖されていた。
昨日の戦いで、民間人を含む104名が死亡、あるいは行方不明となった。
帰って来ていない学院生徒もいる。
そのうちの1人がトーナ・パーナだった。




