050 戦争
「…生きてる。よな」
吹き飛んだ瞬間、時が止まったように感じた。魔族と、目があった。こちらをしっかりと見ていた。多分、走馬灯が誤作動を起こしたんだろう。
…あともう少し起爆が早かったら、斬られてた。間違いなく。
「なるほど、民間人への被害を出さないために、俺を引きつけようって魂胆か」
「…正直、追いかけてこなかったなら、それはそれで良いとは思ってたぜ」
「良いな。お前。気に入ったぜ、その心意気。殺すがな」
「せめて、殺すのは惜しいぐらいは言って欲しいもんだ」
「おいおい。民間人を守った名誉ある騎士には、名誉ある死を渡すのが道理だろ?」
そうかよ。…援軍が来るまで、とことん粘ってやる。
「北門、森からの魔物襲撃! 東門、魔族による襲撃!」
「北と南にかなり兵を集めていましたが、その分手薄になった東の兵士が全滅。現在、少年一名が魔族と交戦中」
「早急に南の兵の半分だけを東へ! 南の魔物に動きはまだ無いが、西のことも併せて考えるなら全員は送れん!」
有志の魔法使い30人程度が、北門の近く、参加者名簿の記入列に並んでいた。…魔物が来るまでには、まだ少しだけ余裕があるのかな。
列のちょっと前の方に並んでた人と目があった。遅れて、こちらにやってくる。
「…おいおい、こんなところで会うとはな。トーナ、ティナ」
「先生。…その、こんにちは」
「サテファ先生! 先生も牛串祭りでした?!」
「そうだ。色々食ったが、多分2連覇だろうな。…じゃなくて、お前たちも参加するのか?」
「…えへへ、私にもできることはないかなって」
「魔物が門を突破しちゃったら、遠距離魔法での制圧が難しくなっちゃいますからね! 戦いの素人が参加するなら、今しかない! って思いました」
「…おおう。思ったよりちゃんとした答えがトーナから返ってきたわ」
「私もちょっと驚いた」
「…なんかバカにされてる?!」
私は確かにバカだけど、何も考えてないと思われてるのは心外だ。抗議しようと、叫ぼうとすると、サテファ先生はこちらをじっと見つめる。…真面目な話なのかな。文句を言いたいところだけど、ここはちゃんと聞こう。
「…死ぬかもしれんぞ。軽い気持ちなら、今すぐ中央の方へ逃げろ」
「…この辺り、うちの家があるんですよ。だから、正直引けないです」
「私は…、軽い気持ちかもですけど、それでも、できることをしたいんです」
「…正直な、子供を戦いに、戦争に参加させるのはクソだって思ってる。
未来ある若者にさせることではない。
…だが、その意思を否定はしたくない。…護るぞ、国を!」
「おおぉっ!」
「お、おぉっ!」
陣形はシンプル。剣士などを前に、そこから少し後ろに魔法使いなど。
ただし、大人数で、しかも連携の訓練などろくにしていない以上、戦い方は限られてくる。
今回は前衛職の後ろから、味方を巻き込まない位置へ、ひたすら山なりに魔法攻撃。私の場合は、曲がる風の炸裂弾だ。
雪崩のようにこちらに突っ込んでくる魔猪に対して、ギリギリこちらの処理能力が上回っている感じ。
それでも、すでに死者は出ている。ジリジリと、削られている。
「トーナ! 大丈夫?」
となりのティナが、そう声をかけてくる。…私としたことが、シリアスしすぎたようだ。
「…大丈夫! ティナが隣にいるもん!」




