047 祭り
お祭りが苦手だった。楽しそうに笑う声が、仲睦まじい恋人同士が、いつも恨めしいと思ってた。
何より、そんなことを思ってしまう私自身が、とてつもなく嫌いだった。
「みんなどこの買った?」
「あたしは、前回優勝屋台のやつ」
「ズルじゃん! 前回のトップぐらいは殿堂入りしとこうよ!」
「あはは…。列、すごい長かったよね。さすが前回優勝。というか、早かったね戻ってくるの」
「スタッフがすごく多かった。あと、メニューも複数あった」
「ガチの連中じゃん…本気度凄まじい…」
「トーナちゃんはどこの選んだの?」
「前回準優勝チーム!」
「えー…」
ちょっぴりむすっとした表情。それで怒るのは理不尽だよ、トーナちゃん…。
「そういうティナはどう?」
「えっと…。あっちの屋台」
「なんというか…」
「かなり、素朴」
「意外と、こういうお店のが美味しかったりするんだよ!」
「そうなの? ひとくちもーらいっ!」
店主さんが、少し羨ましそうに楽しむ人たちを眺めていた。口元を緩めて、小さくため息を吐いていた。
この人が、どういう理由でこのお祭りに参加したのかは分からない。
でも、一本買ってみようと思うには十分だった。
「ごめんよぉ…ティナぁ…」
「さっきのはトーナが悪い。…それにしても、ティナがあんな怒ってるの初めて見た」
「食べ物の恨みは怖いんだよ。トーナちゃん」
「ごめんよぉ…美味しかったよぉ…」
「…ほんとに反省してる? トーナ」
「してる! フェドにも食べさせてやりたい!」
「味の感想は聞いてないんだよ」
「ひぃ…。ごめんなさいぃ」
今、自分でもびっくりするほど怒りの感情が漏れ出てしまった。…そんなに食いしん坊だったかな、私。
「まったく。トーナちゃんは」
「まぁ、この程度にしておきましょう。トーナは、ティナが行ったお店で新しいの一本買う。何度も謝らせるより、そっちの方が遺恨も残らない」
「…確かに。それじゃあ、買ってきて。トーナちゃん」
「もちろんでございます! 行ってまいりまっす!」
びゅんと、風魔法を使ったかのように駆けていく。
「賑やかなやつ」
「…まったく。トーナちゃんは」
綻ぶ口元に気がついたのは、少し後のこと。
「フェド君も、来れば良かったのに」
「次は、無理やりにでも連れてくる」
「そこまでしなくても…。そういえば、ここ二日間は剣の訓練してるんだっけ。…やっぱり、お願いしてもいいかな」
「買ってきたよー!」
「はや」
「…3人で、分けよっか」




