046 休み
両者、剣を置いている。もう不意打ちはない。
「ありがとうございました!」
「フェド様のお力になれたのであれば、喜ばしいことです。
…そろそろ、当て感の練習も視野に入れた方がよろしいかと」
「いえ、格上をひっくり返す力は、今の俺にない。まだ、魔法に繋げる剣術の訓練が優先です」
「…やはり、賢い弟子というのは、見ていて気分が良い。今後も考えることを捨てぬよう、精進を」
「はい! ガレスさん!」
突きの素振り。慣れない動作なせいもあって、動きにぎこちなさがある。
ガレスさんの突きはもっと鋭かった。
「ふぅ…」
脳天、首、心臓。この三つの場所をイメージして、ひたすら反復。
当て感の訓練までは必要ないと思うが、ちゃんと圧はないとダメだ。でないと、ひたすら詰められて魔法どころではない。
ガレスさんとの訓練も、ずっとできるわけじゃない。集中が続かないし、彼には執事の仕事もある。…あと、全身が痛い。
呼吸音。感覚を研ぎ澄ます。これが特に大事だと、教えられた。
感覚と思考は、一緒に鍛えようとするとお互いに邪魔をしあう。でも、実戦ではお互いを引き立てあう。
「んッ!!」
左から右、右から左の薙ぎ払い。往復時間は、訓練開始からかなり短くなった。
真剣を鞘に入れ、一礼。一気に体の力が抜けて、地面に寝転がる。
「腹、減ったな…」
「美味しい! 本当にティナが作ったの?!」
「う、うん! 良かった、喜んでもらえて…!」
「…塩や調味料の分量、良いと思う。うん」
「そうでしょうとも! ティナの料理はいつも美味しいんだぁ」
「こんな料理がいつも食べられるなんて、羨ましいです!」
優しい表情の、フォン・レイベルさん。やっと調子を取り戻してきた、トーナ。
そそくさと、食器洗いを始めるティナ。…照れると隠れるのよね、あの子。
「ティナに、素敵なお友達ができたみたいで、本当に良かった。あの子がちょっぴりきれいに笑えるようになったのは、あなたたちのおかげです」
ほんの少し、小さな声。ティナには届かないだろうけど、あたしたちには一言一句ちゃんと伝わった。
「そんな、頭を下げないでも! 私もあの子と一緒で楽しいので、win-winってやつですよ!」
「あたしも、人に言わなかった話をあの子にできた。だから、感謝してます」
「くぅー…本当に良い人たちだ。あとは、フェド君だったかな、会ってみたいなぁ」
「あいつは今日、剣の訓練らしいです」
「…あれ? 魔法使いと聞いたけど。
珍しいね。剣士が魔術を齧るのは良くあるけど、その逆はあまり見ない」
「まぁ、変わったやつだとは思います」
「牛串祭り?」
「そう! 食べ比べして、一つ選んで投票。究極の牛串を決める! らしい!」
「私は割とお腹いっぱいだなぁ…」
「あたしも、お腹に溜まってる」
「…実は私も」
沈黙。まぁまぁ乗り気だったティナと、そもそも祭りが好きなんだろうトーナ。
「しゃーない! 一本だけ、美味しそうな屋台探そう! 結果は今日中に発表らしいから、誰が1番人気の店を選んだか、勝負だ!」
「あはは…30ある屋台で1位を当てたら、本当にすごいんだけどね」
「並んでるところ選べば勝算はあるでしょう」




