039 カラッタ村1
想定外。それに尽きる。
周りを高く見て、自分を低く見ることの多いティナ。
彼女に必要なのは、あたしの問題を少しだけ匂わせることだと、そう考えた行動だった。
誰にだって抱えている問題があると知れば、焦りを少しでも取り払えるだろうと。
「落ち着いて。別に、不治の病ってわけでもない」
「治し方に算段ついてる、みたいな言い方だね」
「…まぁ、そうかも」
「嘘でしょ。今、私の悩みに話を無理やり戻そうとした」
「そうだとして…」
いや、無理に隠すような話でもない。もちろん、あまりひけらかすような話でもないが。
「…じゃあ。少し、昔話に付き合ってもらう」
「ねぇねぇフェド。あたしの魔法、なんて名前をつけるべきだと思う?」
「名前なんてなくても。…炎魔法、フレアビッグバン、とか?」
あまりにも傑作で、笑いが止まらなかった。こいつ、やっぱり面白い。あたしはそう思った。
「やっほーフェド。あたしの魔法、どうよ。…フレアビッグバンだっけ?」
「それを掘り返すな。…また、威力が上がった。まだ、上がるのか?」
「多分上がる! 4年前からちょくちょく訓練して、少しずつ成長してきてるんだし、急に止まることなんてないでしょ」
「そりゃ、そうだ。…もう、村で一番強いんじゃないか?」
そんな時、魔物の群れが襲ってきた。確かに、それより前は異様に静かだった。それでも、集団で、なんて想像してた村人はいなかった。
だから、発見が遅れて、すぐそこまで迫ってきていた。
「俺が囮になる。ロアだ、あいつの魔法!」
村の男はそう言って、魔物の前を横切った。
半分ぐらいだろうか、そちらの方に釣られていく。
「ロア。貴女の魔法が必要です。彼は水魔法の使い手、ちゃんと身を守れる。だから、早く!」
村の男は死んだ。衝撃に吹き飛ばされて、打ちどころが悪くて、そのまま帰ってこなかった。
殺したのは、あたしの魔法だった。
「ありがとうって、そんなのおかしいでしょ。私の父さんは、あいつの魔法に殺された!」
「…口を慎みなさい。貴女の父が魔物を引きつけ、ロアがそれに応えた。そのおかげで、村は守られた」
「そんなの知らない。私たちだけで、なんとかなった。あいつがいなくても、みんなで倒せた」
「黙りなさい。少なくとも、貴女の父はそう思っていなかった。これ以上、彼を悪く言ってはいけません」
「誰もお父さんを悪く言ってない! ロアだ、こいつが全部悪い! 許さない! 絶対に!」
「ロア。大丈夫か」
「平気。だから、1人にして」
「そんなのできるか。扉越しでも、背中越しでも良い、だからせめて一緒に」
「いや」
「…そ、うか」
「あいつの魔法、見たくない」
クラスのやつは、そう言った。そりゃそうだ、間違ってない。
「あいつの顔、見たくない」
クラスのやつは、そう言った。そう言われても、仕方のないことをした。
「この村から、出て行け」
「良い加減に、しろよ」
その日から、フェドは騎士と呼ばれるようになった。




