038 ティナ・レイベル
「しんど、かった?」
無意識に動いた口とは逆に、その言葉は心に染み込んでいった。
「私は、何も。だって、何も、できないし」
「たとえ何もできない奴でも、しんどいって言うぐらいは許されると思うけど」
「でも、炸裂弾も、できてない。フェド君にも、トーナちゃんにも、ロアちゃんにも、何も渡せてない」
「何か渡してほしいものがあるなら、その時そう言うつもり。2人もそうでしょ」
「最近、フェド君とトーナちゃん、ずっと魔法の研究してて、でも、私じゃ力になれなくて」
「…あいつら、ティナにも相談してなかったのか」
「…えっ、ロアちゃんにも相談してなかったの?」
「多分、ギミックの情報を与えたくなかったんでしょうね。曲芸での評価と順位にブレができるから。
…まぁ、あたしたちから得られるものはない、とも思ってたかもだけど」
「私は…、ロアちゃんなら、多分、順位のこと気づいちゃうからで。私は、多分、力不足だから」
「…そうだとして、ティナはどうしたいの」
「わ、私は…」
もっと、頼ってほしい。友達なんだから、仲間なんだから。私だって、みんなのために頑張れる。
でも、それは口から出てこない。
「…確か、近所に花畑があったよね」
「え、うっうん」
「じゃあ、行こう」
「やっぱり、何も感じない」
「えっ、今、なんて」
「昔、あたしも花が好きだった。でも、今は何も感じない」
「それって、どういう…」
お花を悪く言われたとか、そんな軽い話じゃない。
ロアちゃんは無愛想な人で、率直で、合理的で。
そんな人が、もしも昔はそうじゃなかったら。そう思うには十分すぎた。
「わ、たしで良かったら。なんでも言って欲しい。
ロアちゃんの、好きなお花の話を聞いてみたい。
私の料理で良ければ、美味しいものも、食べてみたら、いいんじゃない、かな」
「ティナの悩み相談でしょう。あたしのは、後回しでも良い。そうじゃなくて」
ロアちゃんの言葉が終わる前に、私の口が動き出す。
「しんどい時は、しんどいって言って良いって、ロアちゃんが言ったんだよ」
「今のあたしは、それを感じない。だから、別に良い」
「良いわけ、ない」
「今も不便じゃない。もちろん、何かに感動できるのが人間だって知ってるつもり。でも、今のままでも問題はない」
「私は、ロアちゃんと一緒に笑いたい。笑えないロアちゃんが嫌なんじゃない。友達だから、一緒に笑いたい」




