032 策謀
「トーナ。協力して欲しいことがあるんだが」
「良いよ! フェド! 何して欲しいの!?」
「せめて内容聞いてから返事してくれ。頼みづらい」
「…できると思うか?」
「できる! …と、思う。多分!
でも、間に合う? 6月終わりの試験まで、今から2週間しかないよ?」
「このまま下位落ちってのは避けたいからな。上がって来れるかわからんし」
「…じゃあ。どっちが先に完成させるか、勝負だ!」
「さて、フェド・アルネス君、トーナ・パーナさん。頼み事というのは、何かな?」
「単刀直入に言うと、俺たちを22位以上に入れないで欲しいです。そうならないために、学長権限で可能な限り内密に点数調整してください」
「…ほう。これはまた、面白いことを言う。君たちがその近くの順位に到達するには、威力での点が足りなすぎる。…いや、だから、今回の頼みか」
「はい。入れ替え戦に出たとしても、威力が話にならないので」
「他に点を稼げるとしたら曲芸のみ。…これは、全くの想定外だな。
トーナ・パーナさんも、同じ理由かな? というより、これは君からの頼み事でもあるのかな?」
「あっ、はい。えと、もちろん私の意思です」
珍しく、固くなっているトーナ。偉い人、というより真面目にしないといけない空気に弱いらしい。
「…ふむ。大体話は分かった。要するに、中位から上位への入れ替え戦、その門番になるのを避けたいのだね。君たちは。実際に、似た状況で学内から反感を買ってしまった生徒の事例がある。
この学院は、体調不良以外での入れ替え戦の辞退を正式に認めていないうえ、枠の繰り上げもない。学生間での不正行為防止や、管理の単純化などの目的だ。それ以上に、勝負を避けることは、成長の機会を捨てることと同義だと、私は思うのでね。
私としては、望まぬ状況や環境は奮起の材料にして欲しいものなのだが。もちろん、君たちにも言えることだ」
「それは、まぁそうですね」
「だが、このままでは入れ替え戦が本来の役割を果たさなくなる。あるいは、君たちが上手に手を抜くことを強いることになる。それは、私の理念に反する。
…そうだな。私たち3人と、曲芸の採点担当のサテファで計4人。極限まで減らすなら、この人数だな」
少し、考え込むようなそぶりを見せる。ただ、俺にはそれがそういうポーズのように見えた。
「よし。良いだろう、あとはこちらに任せてくれて問題ない。他言無用で頼むよ?」
握手の構え。交渉成立の証、みたいなものと解釈できた。
「もし、上位との入れ替え戦に参加したくなった場合は遠慮なく言いに来てくれ。…それでは、1週間後。君たちの曲芸を、楽しみにしているよ」




