003 ラタタ村
「ロア! どうやったら魔法って爆発するんだ!?」
「おおう。急にどうしたよ。なるべく自分で考えたいって言ってたじゃん」
「…そうしたかったけど、どれだけ力を込めても、爆発しなくて」
「…もしかして最近ずっと、ふんぬー! って叫びながら魔法使ってたのって…」
「…だって、できるかもしれないじゃん」
ロアは、腹を抱えながら笑った。…実に、腹の立つやつだ。
「仕方ないなぁ、お手本を見せてしんぜよう。…先生には内緒ね、あたしの魔法、威力高すぎちゃってねぇ。授業以外で使うなって言われてんの!」
「このやろう。…でも、ありがとう」
森を抜けて、平原に出た。
「怖いぐらい、魔物がいない」
木に登って望遠魔術を使ったロアの報告。少なくとも、ここらの平原から多くの魔物が消えているらしい。
セレアと同じくらいの距離に、村が二つある。ここから見たその国を12時とすると、二つの村は10時と1時あたり。
…どちらか、あるいは両方とも襲われたとみるべきだろう。
「周囲の魔物を一旦近所の森に集めてから強襲。ってシステムだとしたら、一つずつ攻める方が合理的か」
降りてきたロアは、微妙そうな反応。
「村の規模って視点を入れるなら、あの二つはそこまでしっかり攻める必要はない気がする」
…これ以上は歩いて情報収集するしかないようだ。魔物が蔓延っていないというのは、間違いなくチャンスなわけだし。
「魔猪の足跡、…カトラ村(1時方向)か」
「じゃあ、ラタタ村(10時方向)に迂回してから、国に行こう。カトラ村を攻めた残党が怖い」
ゆるい風が体を冷やす。夏は終わり、秋の中腹。太陽はほぼ真上に陣取っている、その出力はかなり控えめ。
歩き続ける俺たちは、黙って周囲の索敵。特に、魔猪への警戒を強める。やつの突進をもろに喰らえば、しばらく歩けなくなる。
日がもう少しで落ちる頃。なんとかラタタ村に到着。
「ラタタ村へようこそ。歓迎するよ旅のお方」
安っぽい柵で囲われた小さな村。
ラタタと書かれた看板と、1人の門番が笑顔で出迎える。
「武器も荷物も持たない旅人がどこにいるんだ」
「そりゃそうだ。…近くの村からかい? いったい何があった。
村の若者が、遠くで煙が立ち上っていたと言っていたが、火事でもあったのかい?」
村長宅でのご馳走を楽しんだあと、フェドと情報共有した部分も、推論も含めて全て話した。
「そのようなことが…。これは、ここの村も、もう安全とはいえないのぉ」
「犯人側の目的がわからない以上、なんとも言い難いですね」
少し、何かを思案する村長。
「…2日後。国の行商人が、馬車でこちらにいらっしゃる。少し奮発すれば、3人ぐらいは乗れるスペースができるじゃろう」
あまりに、優しい提案。存在し得ないだろう裏を読もうとした、あたし自身を殴り飛ばしたくなる。
「ありがとう、ございます」
「なぁに、ただお買い物が好きなだけじゃ。代わりといっては…」
ミラ、と一言。あたしの後ろの部屋の方へ声をかける。
ギィと、立て付けの悪さを感じさせる扉の鳴き声。振り向いたあたしと、その少女の目が合った。




