029 自己紹介3
「泣いてるの、初めて見た」
「うっせぇ! 泣いてねぇやい」
「違う、フェドの方」
「えっ。…あ、れ」
情けない声。俺の口から出てきたことに気づいたのは、少し遅れてのことだった。
頬を伝うそれは、今まで誰にも見せようとしてこなかったものだ。なんとなく、涙を見せるのは恥ずかしかったから。
「あー。うちの学科校舎はな、授業が全て終わると結構早めに閉まっちゃうんだよな。
屋上に誰かいると聞いて来てみれば。…何があったかは知らんが、さっさと帰れ、青春は今日でやり切らんくて良い」
ロアと俺は、訓練室にいる。
ティナは元々用事があったらしく、いそいそと帰って行った。時間を確認した時は、とてつもなく驚いていた。
トーナは気分じゃないと言った。どうにも本人的には、もっと別のポイントで話を終わらせるつもりだったらしい。
「上出来だった。やるじゃん」
「そりゃあどうも。柄にもないことやったよ、ほんと」
「もしかして、涙は演技だった? 中々の演技力」
「…そんなわけ、あるかい」
いつも通り、表情ひとつ変えず言ったから。いつも通り、そう返事した。
…いや、反応が遅れたのか、俺が気づくのが遅れたのか。
いつも通り無表情なロアが、ほんの少し驚いていたように見えた。
「気のせいか」




