028 自己紹介2
「お母さん!? 会ったこと、あったんだ」
「偶然目的地が一緒だったから、安く依頼を受けてくれたんだって。すごい人ってお父さんが言ってたから、…うん」
「…そんなことある?」
「実際あったらしい」
「そんで、色々と話した。ハキハキとして、明るい人で、ちょっと大げさな笑い方が可愛いなって。
魔法を4歳から使ってたって言ったらちょっと心配された。小さい時に使いすぎると、大人の時に魔素漏れが起きやすくなるからって。
でも、すごいじゃんって言ってくれた。
…ああ、言い忘れてた、その時9歳ね。
魔法のコツを聞いてみたら、ちょっと難しいなぁって言われた。勝手が結構違うらしくて。私、水属性でねって。
ちょっと考えて、そういえば、風魔法で戦ってる知り合いは居なかったなって、そう独り言を漏らして。
「じゃあ、トーナちゃんが一番最初になるかも」
…って。すごく、嬉しかった」
深呼吸。…小さく、呻き声のような何かを漏らしてから、少しニヤける。
「あとはねぇ、娘さんがいて、すっごく可愛いって言ってたなぁ。
魔法使いになりたいって、私みたいになりたいって言っててねって」
ティナ本人は、呆気に取られた表情。9歳というと、すでに属性は判明しているタイミング。俺たちは全員16で同じ歳、誕生日は違うが…まぁ、そう言うことだ。
「ご、ごめん。顔戻んなくって、私は良いから、続き、お願い」
「可愛いなぁティナちゃんは」
すごく、優しい顔でトーナはそう言った。すぐあと、多分、気合を入れるためか。急に自分の頬を軽く叩いた。
「そんな時、魔物が出てきた。…いや、私とお父さんが気づくより早く、馬車から飛び降りて、水の槍を作って、打ち出した。
もちろん、魔物慣れしてるって印象もあった。けど、それ以上に、魔物に刺さった水の槍が、ゆっくりと流れる水に変わったのをみて、それが魔法だったって、その時やっと頭が理解してくれた。
多分、私の風じゃ、おんなじ事はできないって思った」
「あー、そこからは、結構しんどかったな。それでも魔法が大好きで、フォンさんに、すごい人にも褒めてもらって、だから、無理だってわかってても逃げられなくて。訓練して、訓練して。
フェドがやった、風魔法の圧縮までは思いついたんだけど、そのまま打ち出しちゃって。…まぁ、目の前で起爆して、それで、大怪我しちゃって。
お父さんには、怒ってすらもらえなかった」
「それでも、魔法を捨てられなかった。でも、ちょっとずつ訓練をしなくなって、お父さんについていきもせず、ぷらぷらと街を歩き回るようになった。
そういえば、今年から魔法学院受けれるじゃんってなって。…なんで受けようって思ったのか、自分でも説明できないな。
多分、落ちたら楽になれると思ってた。そんなはず無いのにね」
「ありがたいことに99位、ギリギリで受かっちゃって。…色々と中途半端だったなぁ。元々は、ここまで来たら頑張ろうって、ちゃんと切り替えたつもりだったのに、自主訓練をする気は起きなかった。
周りに風魔法使いがいないってのもすごい安心したなぁ。
仕方ないって、割と心の底から思えた。例のランキング表を下から一人一人丁寧に確認してた時。上位クラスのあたりの時には、風魔法は私だけって本気で思ってた」
「そしたら、よりによってそいつは次席で。…このまま、終わってられないって、負けたくないって。思っ…た」
「…頑張ってきて、本当に、良かった」
俯く彼女。静まり返る空気。ロアは、私ではうまく寄り添えないと言いたげに、こちらを見る。ティナも、想定外の事態にどう対処して良いか分からずこちらを見る。
どういう立場で、俺はものを言えばいい。
同じ風使いとしてか?
焚き付けた者としてか?
炸裂弾という回答の存在を伝えた者としてか?
「…やっぱり、気の利いた事は俺には言えないな。
どっちも風魔法と向き合ってここまで来たってのに、前提条件が違いすぎる。
…でも、トーナ。
君がここまで来て、頑張ってきて良かったって言えたのを聞けて、俺はすごく嬉しいって思った」
今、トーナが欲しいのは理屈じゃない。ロアが俺に任せた理由も、それだ。だから、全部前に出せ。
「風魔法仲間として、似た悩みにぶつかったものとして。…それだけじゃないな、友達として、仲間として」




