025 学年首席 ラヌの独り言1
最近ちょっとした悩みがあるんだ。良かったら聞いてくれ。
そうだな、まずは4月の時の話だ。
ティナ・レイベル。可愛い。この学校で最初にナンパするなら、彼女しかいない。そう思った。
その立ち姿、表情、雰囲気。そして何よりその顔。好みにどストライクだった。それ以外に理由はいらないだろう?
さて、今日は解散ということで、さっそく彼女のいた場所へ振り返る。…いない、どこいった?
出入り口、スタスタと出ていく彼女の後ろ姿がチラッとだけ見えた。ついつい、逃すかと追いかけようとする。
しかし、なんて声をかけよう。あまり自己紹介の話を掘り返すのは良くないだろう、本人的にあれはいやな思い出だろうし。
そんな迷いがあった俺より、迷いのないやつが先に声をかけるのは必然という話だ。
「ふぉぉっっ!」
つい、口から漏れてしまった。その2人はこちらを振り返る。ゴホンゴホンと、咳払い。2人からの視線が外れないので、仕方なく廊下を歩き、立ち止まって話していた彼らを追い越す。
曲がり角、当然曲がる。
不覚により特等席を失ったが、ここもまぁ悪くない。何より、自身の振る舞いを気にする必要がないのが大きい。
小さく顔を出して、その光景をじっと眺める。
良い。間違いなく良い。
閉じた学校社会、同クラスだが、まだお互いを詳しく知らぬ男女2人。そんな2人の、甘酸っぱい青春物語の始まり。それがさっきの一幕。
…ああ、この学院に入って良かった。本当に良かった。
一つ目の悩みは、そういった甘酸っぱい話が結構レアだったということ。少なくとも、上位クラスではそういう浮ついた話を全く聞かない。彼らを除いて。
あの2人は本当に良い、ただ趣味が合う、気が合う、そんな安っぽい関係ではないんだ。
ティナ・レイベルは、花を愛でることと、料理が好きらしい。もちろん、魔法には結構強い思いを持っている。この学院のやつは大抵そうらしいが。
フェド・アルネスは、生粋の魔法オタクだ。魔法や魔術について、を話題の軸にすると少しだけ饒舌になる。話したこともあるが、結構わかりやすいやつだった。
最近、水魔法について聞いても良いかと問われてしまったが、聞く相手を間違えていると思う。多分、交流そのものが下手なタイプだ。割と致命的なレベルで。
だが、少なくとも悪いやつではない。
わかってくれたか?
そうなんだよ、魔法という共通点ですら、その思いや執着に差がある。
それでも、お互いがお互いを尊重し、今も一緒に昼を過ごしている。
まず、良きクラスメイト同士であるんだ。
訓練室。そこでは、この2人は師匠と弟子の関係だ。どうやらフェド・アルネスの魔法は結構凝った工夫をしているようで、その技術の伝授をしている。
これも、まぁ悪くない。ティナ・レイベルの魔法における悩みを解決。
少し師匠が口を出しすぎている感は否めないが、ティナ・レイベルが良い。
「でも、絶対に、良いお手本だよ」
カッコいい。本当にカッコいい。自分の成長のためだけではない、感謝や尊敬を伝えるため。それのために、強く宣言する。
ライバルになるとも、目標にするとも言い切れないのに、それでも、フェド・アルネスを軽くすることを許さない。
呆気に取られた表情と、訓練を再開した彼女を見守るフェド・アルネスも、この場面に限ってはとても良い。
彼女の状況はあまり良くないと聞いた。実際、彼の表情からもあまり安心は見えない。だが、どうにか頑張って欲しいという、どこか悲痛な表情がすごく良い味をしている。
あっ、顔が変わった。…おいおい、さては頭の中からティナ・レイベルが消え始めてるな。
まぁ、本人談だが、フェド・アルネス自身もあまり状況は良くないらしい。次席だから、当分大丈夫だと思うのは間違っているのだろうか。
5月。俺にとってはかなりの想定外が起こった。なんと、2人とも中位に行ってしまったのだ。
これが、二つ目の悩みだ。
俺は何を楽しみに、休み時間を過ごせば良いのか。…あ、そういえば、図書室見てなかったな。良い作品があれば、しばらくはそれで持たせよう。ブックカバー持ってこなければ。




