021 勝敗
「…できた」
彼女は、小さく呟いた。少ない時間で、なんとか試験前に炸裂弾を完成させた。
これなら、入れ替え戦でも勝機はある。
「やったじゃん、トーナ」
「うん!」
これほど悪趣味なことはないだろうなと、苦笑いの表情が元に戻らない。
結局俺は、19位だった。上位クラスの20人のうちで、だ。
19位 20位と21位 22位
49位 50位と51位 52位
要するに、上位と中位、中位と下位の分かれ目。ここは試験終わりの時、入れ替え戦を行う。科目は、威力のみ。
腹立たしいのは、オーディエンスの存在だ。明日から同じクラスになるかもしれない人を見なければ、という理由らしい。
生徒の人数は、さらっと見た感じ60人。…本当に、悪趣味だ。
「あぁ! あんた、試験の時の! すげぇ風使い!」
「あー、っと。入試の時、同じグループのやつか? 悪い、覚えてなくて」
「しゃーないしゃーない。俺さ、威力に自信なくてな、良いとこなしだったから、そりゃあ覚えてなくてもだろ」
手を伸ばしてきた、握手の構え。…なんか、見知らぬ人が異様に好意的だと、正直気持ち悪いな。
「俺、あんたに感謝してんだぜ? あの風魔法、そのギミックに気がついてさ。
俺の炎でも、再現できんじゃねぇかって」
ゼッケンに、大きく21と書かれている。なるほどな。
「そりゃ。どうも…感謝ついでに、手を抜いてくれたりはしないかな?」
「師匠へ恩を返すなら、大勝以外にないと思うぜ?」
「そりゃそうだな。うん」
披露の順番は、21位、19位、22位、20位。ややこしい順番だが、一つ理解できたことがある。
あの日の再来。
閃光、音、振動、風。それが、あの笑顔を思い出させる。
それは、俺が憧れた魔法へ、その領域へ食い込める出来栄えだった。
看板は跡形もない。支柱ごと、この世から消し去られてしまった。
「あぁ…」
20のゼッケンを着たティナは、膝をつく。それは、1人の上位落ちが確定した瞬間だったから。
順位の発表なんて、見なくても理解できた。一位はあの21位の人で、次いで22位の人。
私とフェド君は、中位クラスに落ちてしまった。
…結局、あれだけ手伝ってもらったのに、炸裂弾は完成させられなかった。
51のゼッケンはずっと楽しそうだ。こういうのは、挑戦者の方が気楽なものだったりするのだろうか。
わざわざ、観客席まで、あたしのいる所まで走ってきた彼女は、すごく楽しそうにこう言った。
「私さ、エスパー・ロアが言ってた通り、諦めてた。
でも、諦められない理由ができちゃって、それで、昔みたいに頑張ってさ。昔頑張ってた私が、背中を押してくれた気がしてさ」
自分のうるうるとした目に気づいた彼女は袖でそれをこすり落とす。
「頑張る! 応援して!」
「頑張れ、トーナ」
震えが止まらない体を押さえる。武者震いか、緊張か。きっとどちらも、震えの正体だろう。
完成したのは、ほんの3日前。月末の試験にもギリギリ間に合った。
風の囲いを作り、その中に風の爆弾を作る。標的にぶつかれば、それが爆発してダメージを与えられる。
噂で聞いた感じだと、こうだった。もしかしたらもっと違う手順かもしれないけど、それでもちゃんとできたし問題ないはず。
完成直後、ロアに聞いてみた。フェド・アルネスはそれを自力で考えたのか。
「あたしの魔法の、マネって言ってた」
少し、嬉しかった。昔の私の考えが足りなかった訳ではないと知れたから。
一番苦戦したのは、射出工程だった。囲いの風も、発射装置の一部であると気づいた時は、私は私を天才だと本気で思えた。
射出。練習通り、一直線に的まで。
木製の的は真ん中から四つに分割されるような形で吹き飛んだ。…入試の時は、傷一つついていなかったというのに。
「中位クラス入り、おめでとう。余裕だったね」
ズビズビと泣く彼女に、あたしは賛辞を送る。
「ロアァァ。うっぐ…ありがとぉぉ」
「すぐ、追いつく。だから、泣くんじゃない」
「かっごいぃよロアァァ」
渡したハンカチを、涙でぐちゃぐちゃにした彼女はそう叫んだ。




