018 弟子
「あー、俺はラヌだ。気楽にって空気じゃないな。そうだな、首席として」
「いや、好きにやっていい。学長直々の許可だ」
「無茶な注文すぎない? …そうだなぁ。
…改めて、ラヌだ。魔法なんてろくに修行したことないし、記念受験と思って受けたら首席だったぜぇい、ひゃっほー…。
あーすげぇやりずれぇな。まぁ、天才ってのはどの世界にもいるってことで、俺みたいな外れ値にも親切してくれると嬉しいぜ。
今、不快に思ったやつは、さっさと俺を超えてみろ! 以上!」
…ああ、最高の踏み台だぜ、ラヌ。そう思ったやつが俺以外にもいると信じたい。
今日は授業なしで解散。訓練室に空きがあれば、いつでも魔法の訓練をしてもいいと言われた。
…せっかくだし見に行きたいところだ。しかし、流石に20位の子…えーと、確か、ティナ・レイベルを放置するのは寝覚めが悪い。
スタスタと、俯きながら廊下を歩く彼女に、俺は普通に走って追いつく。校則違反だろうが、そんなのいちいち気にするのは馬鹿らしい。
「おーい、ティナ・レイベルさん」
「あっ…えっと、フェド君、だっけ。ごめん、家名覚えてなくて…いや、あの、次席なんだよね、すごいな。私なんて、ダメダメで」
「待て待て、実際の魔法も見ずに、そう断定するには早すぎるだろう」
「…そうなの? でも、ランキングでは」
「ランキングだけでは測れないものもある。第一、俺はまだティナさんの魔法属性すら知らない」
「…あれ、自己紹介のと、き……」
「それは思い出さなくていいから」
「炎使い、か。それなら、助言できることがあるかもしれん」
一緒に訓練場に来たのは、ティナからの申し出があったからだ。
"訓練、考察の時間は誰にも負けていないと自負している。"
彼女は俺の自己紹介をちゃんと覚えていたようで、貴方の意見を聞きたいと、まっすぐな目で頼んできた。
「本当に?! 実は、威力の出し方が分からなくて…。水魔法のお母さんも、お父さんも、炎についてはよく分からないって言ってたから。本当に困ってて」
「そんな泣かなくても…。あー、出力自体は結構ある。制御も安定してる。努力したんだなってわかる。才能でいえば、俺よりよっぽどある」
「…そうなの? じゃあ、フェド君は一体どうやって、次席まで辿り着いたの? 早撃ちと、遠距離射撃の練習?」
「それもあるが、例年通り威力は青天井で評価される仕組みだった。流石に完全に捨てるわけにもいかない」
実演した方が早いと思った。試験の時と同じ条件の的があったので、それ目掛けて13秒弾。
「炸裂する風。それを風でコーティングした弾だ。弱点はいっぱいあるが、威力は保証する」
「…すごい。えっ、でもどうして? こんなにすごい魔法、なんでみんなは使わないの?」
「性質上、炎と風でしか使えないからだ。炸裂弾ってのは、圧縮したものを一気に崩壊させて爆発を起こす。水も土も、それには不向き。
その上、炎はもとより結構火力がある。だから、わざわざ練習しようとは思わない」
すごく納得したような顔。だが、あと一歩踏み込めていない領域がある。
彼女はすでに、威力で伸び悩んでいる。まだ伸びる余地はあるだろう。だが、今の延長では、周囲に抜かされないようにするだけで精一杯だ。
…流石に心苦しい所はあるが、それでも言わなければならない。
「間違いなく、俺よりは才能がある。だが、それだけだ」
それでも、表情は崩れなかった。




