016 ロア・アルネス
座学試験が終わってしばらく。学院からの通知書が2枚届いた。恐る恐る…とは言いすぎだろうが、ここで落ちたら一年間は足踏みすることになる。
だから、驕りはないだろうなと、自分自身に強く問いかけてから、結果を見る。
結果を噛み締めていると、ロアが部屋の扉を叩き中を伺う。
…ガッツポーズで応えたのは、さすがに自制できていなかったな。
ともかく、なんとか次席。ロアも無事合格。
「流石だ、フェド。準備期間の少ない中での次席。正直、だいぶ無茶を言っていた自覚はあるが、本当に成し遂げるとはな。見事だ、フェド」
「ロアも、合格おめでとう。私は魔法や魔術にあまり詳しくないが、魔術のみでの合格は前代未聞だと聞いたぞ。見事だ、ロア」
「お前たちなら、きっと大丈夫だろう。…しかし、寂しくなるな」
「そうですね…。しかし、通学には厳しいというだけでそこまで距離はない。大層なことではないはずですよ」
「さようなら、父さん」
俺たち二人は寮での生活を選んだ。本来俺の学費に使う分だったらしい金の一部を、個室寮の利用費に充ててくれた。…全くもって、贅沢な話だ。
俺とロアの荷物は、すでに部屋に送られている。なので、俺たち本体は徒歩でそこまで向かう。
「……」
「……」
最近、彼女と話すことが減った。元々俺は話すのが上手くない。だが、それ以上に変わってしまった彼女に話しかけることに怯えている。
…ここを逃すと、もうあとはない。
「あー。ロア。正直、今どういう状態だ? いや、具体性に欠くな…なんというか…」
少し、考えるそぶりを見せる。
「多分、情動がなくなってる。虹を見ても綺麗と思えなかったり、あたし…含めて、誰かの成長を喜べなくなったり」
「情動か…。一応聞くが、学院に入ることを決めたのは、ロアの意思で間違いないよな?」
「うん。それは間違いない。…なんだろう、欲求自体は割と残ってる気がする。フェドと一緒にいたいって思うし、訓練そのものも続けられるし、お腹だって減る」
「けど、それでも心は揺れ動かない」
「そう」
…なるほど。…最低だなぁ俺。これ、本人に言わせたのは罪としか言いようがない。
「俺も、一緒にいたい。だから、学院を受けてくれるって言ってくれた時…そうだな、満たされた」
「なら良かった」
心のこもってないその声を聞いて、それでも俺はひどく安心した。それが間違いなくロアの脳みそから出力された言葉だと知っていたから。
「笑ってるの、久々に見た」
「まぁ、最近、忙しかったからな」
「照れ隠しはずっと下手だよね」
「うっせぇ」




