126 魔族の王
「あら、フェド君。こんなところで、奇遇ねぇ」
「ティナさんの、お母さん。その、お久しぶりです」
「覚えていてくれた! 嬉しいねぇ。…それにしても、ほんとうに不思議なところで。ここ、軍でしょう? もしかして、私、場所間違えた?」
「ちゃんと軍であってます。…もしかして、この時間に、そこの部屋で呼び出しですか?」
「…もしかして、同じ用件?」
「魔族に関する話なら、多分同じ用件ですね。ロアも遅れて来ます」
「単刀直入に聞こう。魔族の魔法について、君たちはどう考えている?」
大佐と呼ばれていた人がそう聞いてきた。格式の高さは窺えるが、それを鼻にかけているような様子はあまりない人だった。
偶然、一つの答えを用意してきている話だった。
「当たり外れがある。ですかね。人間以上に、強さに差がある気がします」
「こちらとしても、そのように思う。特に、先日の霧の魔族たちの魔法は、単体で見ればかなり弱いものだった。
…戦いに参加した君たちにとっては、あまり気分の良い話ではないだろうがね」
「…いえ」
「そうだ、伝えていなかったね、彼らの魔法の詳細を。本人たちからの話だ、嘘かもしれないことを念頭において、聞いてほしい。
1人目の、大柄のやつ。こいつは、自身の打撃による衝撃の座標をずらせる魔法だった。
2人目、脳に直接語りかけてきたやつ。文字通り、それだけの魔法だ」
ここまでは、想定通りだった。霧の魔法の追加効果は、心臓の鼓動がデカくなる。だったのかと納得しかけていた。
「3人目は、心臓の鼓動を大きくする。魔族のそれも大きくするらしい」
「えっ」
隣のロアも、驚いた顔。
「…続けるぞ。4人目は、霧の発生だ。追加効果は、特にないらしい。インターバルも長く、魔素の燃費も良くないそうだ。
質問は、ありそうだな。フェド君だったかな?」
「はい、えっと。あの射撃は? 後ろからの声は…、そうか本人か。魔法である必要はない」
「射撃はこの道具によるものだな。銃、という名前らしい。彼らの大陸に存在した遺物で、詳しい構造は不明とのことだ。
知らない金属で、精巧な作りだ。予備も持っていたので、2本ある。片方分解したが、再現できるかは分からない。
フォン・レイベル。知っているか?」
「いえ、こんな道具見たことも聞いたことも…」
「…改めて君たちに質問しよう。
魔族の魔法を、どう思う?」
「初見殺し能力が高すぎます。それに、相性が良いもの同士で組まれると、腕が立つものでも…」
「…土の国遠征部隊は、確かに精鋭揃いだった。
長旅とはいえ、20人で出立した精鋭のうち、帰還したのは9人。魔族との遭遇は5回だったそうだな」
「…はい」
重苦しい空気が、重厚な部屋を包む。
「軍の総意でも、徒党を組まれると、厄介だということになる。
そして、最近になって、彼らを取りまとめる存在が台頭してきたらしい。
魔族たちは、彼をこう呼ぶ。
魔王、とな」




