013 セレア
「おいおい、深夜にとんでもない客が来たぞ」
門番は1人、村のそれとは違ってかなり良い防具だ。
「やっぱり客って言い方は変じゃないか? それはそうと、この時間帯に人が来ることは珍しいな」
どれどれと、奥からもう一人全く同じ防具の門番。
特に俺の方を見て、ギョッと驚いた。
「あー…。まず、大丈夫かい? というか、大丈夫だとしても、もっとそれっぽく駆け込んでくれ。こちらとしては対応にものすごく困る」
「そうしたいのは山々だが、色々ありすぎてキャパオーバーしている」
「あたしも、そうなのかもしれません」
「そういうものなのか」
探り探りの一瞬があった。お互い、どうすれば良いのかの正解が分からなかったから。
後から来た門番が、もう片方の門番の方を向く。遅れて互いの目が合う。
「…ともかく、お前はさっさと治療師さまを呼んでこい。
あー…っと、その、だな。流石に時間が時間だし、軽く事情聴取させてもらっても良いかな?」
「少なくとも、魔族の話は嘘ではないだろうね。魔族の血ってのは黒色で、ほとんどが魔素でできている。この子の剣に派手についてたらしいのと、おんなじ特徴だ」
識者のおじさんが、最初に信じてくれた人だった。
門番のおじさんには荒唐無稽すぎる話だったようで、後日治療院で改めて事情聴取を受けたのだが、その時偶然隣のベッドで寝転がっていたのが、その人だ。
それと、三つの村が壊滅していたことも確認が取れたらしい。
国側も、様子がおかしいとは薄々感じていたようだが、ここまでの状態とは知らなかったようだ。
生存者は俺たち二人だけだった。
「両親と会った」
一足先に退院していたロアは、久々に両親に会ったらしい。話通りなら、確か6年前か。
「…どう、思った?」
「顔変わったなぁとは思った」
沈黙、それをものともせず続けた。
「やっぱり、あたし、どこかおかしくなってる」
「あの日からか?」
「多分」
「君が、ロアを守ってくれたんだね。確かフェド君だったかな」
退院した俺は、玄関先で声をかけられた。スーツというらしい、どこか綺麗で整った衣装を身に包んでいる。
これが、貴族か。礼儀作法は詳しくないが、国ではそれじゃあ済まないこともあるそうだ。なので、最低限敬語は勉強してきた。
隣にいたロアは、相変わらず無反応。
「…まぁ、そう、です」
「いつの間にか、娘が無愛想になっていてとても驚いたよ。村ではどうだったのかな?」
「村だと…まぁ、色々ありました。ちょっと、立ち話では終わらないほどに」
軽く、袖を引っ張られた。表情はいつも…いや、最近通りというべきか。何も変わっていない。
それでも、話してほしくないことだけは分かった。
「正直、俺としても話してて気分いい話ではないんですよね。それに、ロアが自分から話すべき話だとも思います」
「そうかもしれんが…。まぁ、良い。君さえ良ければ、養子として迎えさせてはくれないだろうか」
それは、本当に唐突だった。
「身寄りがない状態なので、正直ありがたい話ですが…。ずいぶんと急な話ですね」
「恩人に報いるなら、これぐらいのことは当然と思いましてな。もちろん、他のことが良ければそうさせていただきたい」




