012 決着
暖かい春の風が、冷えたあたしの体に届いた。
吸い込まれるように、引きずり込まれるように、そちらへ歩みを進めていた。
「ロア」
後ろから、彼の声が聞こえた。
じっと見つめる少年から、俺は目を逸らせない。近場の魔猿は呼べたが、まだ30秒はかかる。
「炎魔法」
たしか、ロアと言ったか。彼女のつぶやきから、遅れて暖かい風が頬を伝った。
嫌な結びつきは、そちらを向くのに十分すぎる理由だった。
「…は?」
お嬢さんの手のひらから、暖かい風。この子の魔法じゃない。これは、魔術か。
それは、俺の敗北を示す行動だった。指示にない行動は、実行しない。…完全掌握まで時間がかかるタイプだったか。
一瞬の痛み。しかし、すぐに熱しか感じなくなった。どうせなら、格好の良い遺言を言いたいところだったが、それをするには好き勝手やりすぎた。
地獄で待っているだろう、カラヒと反省会でもするか。第一声は、とうに決めている。
その剣は、俺の首を刺した。
「ロア! 無事で、本当に、よかった」
「無事では、ない気がする。なんか…うん」
大変なことがあって、それでも乗り切れて。それにしてはあまりに淡白な反応。
何より、表情があまりにも動かない。緊張が解けたような様子がない。…いや、語弊がある気がする。
「魔猿。危ないし、森から出よう」
「…確かに、そりゃそうだ。急ごう」




