121 つっかえ
逃げた魔族を追った組とも合流できた。最終的に、生存者は9名だった。捕虜は三体に増えた。
森を燃やすのも死体の回収も、第二部隊に任せることになった。ひとまず、俺たちは役目を終えたということになる。
魔族を捕虜にしたことは、極秘事項として扱われることになった。民衆からの不信感を買わないように、だそうだ。当然、俺たちにも他言禁止の命がある。
しかし、どうやって国の門を通し、軍に連れて行ったんだろうか。…いや、門を介さずにやれば、民衆にも気づかれにくいか。
…ともかく、俺の考えることではないな。
「やっほ。遊びに来た。入れて」
「…ロア。…まぁ、良いけどさ」
手土産は、ホットスナックが少々だった。
無言が続く。お互いに、美味しいとも口に出さずに食べ進める。
ようやく、俺は何か胸につっかえてるものがあると理解した。だが、それの対処法が分からない。
「サテファ先生と会ったんだけど、めっちゃ心配された。これも、全部奢ってもらっちゃったんだよね」
「そうか。俺も、顔出さないとな」
「余計心配するでしょ」
「…そうか?」
「鏡はちゃんと見た方が良いよ。あたしも人のこと言えないけどさ。サテファ先生に言われたばっかだし」
「そう、かぁ」
数秒の硬直。それは、手鏡を探し始めるまでの時間。
確か、机の上だったかな。
「はい、これでしょ」
「ああ、助かる」
…あんまり、いつもと変わらないような気がする。少し、疲れ気味な感じか? 少なくとも、見てすぐ分かるような変化はない。
「そんなに、ひどい顔か?」
「自分の顔の変化って、案外分からないよね」
隈があるわけでもない。…なんか、じっくりと自分の顔を確認すると疲れるな。
座布団を枕代わりに、無意識に寝転んでしまう。
そう言えば、今は何時だろうか。外が暗くなってから、まぁまぁ経つのはなんとなくわかるけど。
「今日、ここに泊まるね。外泊届出しちゃってるし、どのみち門限だし」
「ああ、かまわない」
「おやすみ」
瞼が落ちていく直前に、そう声をかけられた気がした。




