119 連携
「逃げた奴らは魔物にやられたみたいだな。お前らも、逃げるつもりかな?」
睨み合い。3人の魔族に囲まれている。国の方には、例の体格がいいやつ。あいつは鎧を着ていた人を、すでに9人殺している。
あの強そうなやつじゃなければ、無理やり突破して国に突っ走るのに。残りの二人は、ここまで戦闘に関わって来ていない。おそらく、積極的に戦うタイプではない。見た目も、小柄なやつとひょろっとしたやつだ。
…もしかしたら強いのかもしれないが、そこまで考慮に入れてる余裕はない。
『お前は誰だ』
その声と同時に、大柄の魔族が兵の1人を襲う。腹へのモロな殴打。鎧を着ていないやつへの攻撃は初めてだ。
外傷はなさそうに見えた。だけれど、破裂音の後に倒れる。口から血が溢れ出ている。
とりあえず、拳に触れてはいけない、そう考えよう。
それを横目に見ながら、国の方へ走り抜ける。包囲自体を抜けるのは簡単だった。
「逃すなよぉ! 追え!」
「分かった」
比較的大きな足音が、俺の後ろ。残り2匹は兵の相手。
「なんで来たんだ!」
隣を走っていたのは、ロアだった。
絶対に、やると思った。こいつは頭が回らないわけじゃない。そして、他人を捨て石にする度胸は持っていない。だから、いざとなったら自分を捨て石にする。
…やはり、ここに来て正解だった。
フェドはあのデカいやつを、門の方まで引きつけようとした。
そして、残されたあたしたちは、土魔術で安全に国の塀をこえられる算段。
「帰ったら説教!」
「言ってる場合か! このままじゃそっちが追い付かれる!」
風魔術は使えるが、ズレのせいで加速に役立てるのは難しい。風魔法のようにはいかない。
だから、いずれあたしはあの魔族に追い付かれる。
「フェド! 合わせて!」
「ッ! ああ!」
あたしは、魔族との間に土魔術の壁を作る。瞬時に分厚いものが欲しかったので、土魔術と土魔術の同時操作。
パズルを二つ同時に片付けるようなことだ、そんなに難しいことではない。
初級魔術だと、制限に引っかかってできなかった技だ。
「これぐらい」
そいつは、壁を殴り抜いた。…いや、言語化するなら壁の特定の場所が破裂した、に近いか。
合図より先に、フェドの投げた黒い球が魔族の方へ。あたしも、自分の体を囲うように水の魔術。
さっすが、フェド。あたしの無茶ぶりに、ちゃんと合わせてくれる。
…ほんとうに、怖いぐらいに。




