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人魔の世界  作者: 道草ノ跡
スーベル魔法学院編

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118 ぐちゃぐちゃ

「指揮を引き継ぐ! 鎧の前衛と軽装備の後衛、位置を入れ替えろ! 試作鎧のやつは装備を脱いでから戦え!」


 後衛で控えていた臨時隊長がそう叫ぶ。少し遅れて、爆発音が4回鳴った。

 弱めの炸裂弾を思わせる音だったが、陣形のさらに後方から聞こえた。だから、一瞬安心した。


 振り返ると、肩を押さえる臨時隊長。地面に血が滴り落ちている。

 奥に、魔族らしきやつがいた。遠距離攻撃の使い手か?

 …ということは、さっきのは射撃時の音ってことか。独特の形の武器をこちらに構えていたのは見えた。


「くっそ、精度が微妙すぎる!」


 そう叫びながら、魔族は普通に背を向けて走り出した。ずいぶんと及び腰だな。


「あの攻撃、おそらく鎧は貫通しない! まだ鎧を着てるやつは、あいつを追いかけろ! 逃すな!」


 数人が追いかける。俺とロアはここに残るべきだな、霧の魔族がこちらに残っているはず。



「ぐぉ、ぁ…」


 今のを合わせて、倒れた人数は合計7人。…さっきから、メチャクチャに振り回されてる。


「なんなんだよぉ! こいつら!」


 そう叫びながら、兵士の1人が国の方に逃げていった。それを皮切りに、何人もの兵士が国へ走り出した。


 そういえば、鬱陶しい声は聞こえなくなった。霧が晴れたタイミングとは、少しズレていた気がする。

 声を聞かせる3人目がいるのか。それとも、霧を吸い込んだせいで起きた現象なのか。まだ分からない。


 …違う、それどころじゃないだろ。どうする、俺も逃げるか? 

 正直、このまま逃げて魔法や戦い方の概要を伝えるだけでもかなりの戦果だ。


 倒れた兵と、逃げた兵、それに追撃へ向かった兵を合わせて19人。俺とロアを合わせても、ここには7人しかいない。


「全員! 撤退だ! しんがりは私がやる!」


 臨時隊長は、そう叫んだ。



「バカ! やりすぎだ! 逃げられると面倒だし、追いかけるぞ!」


「わかった」


「その、ぼくも、いかないとダメ?」


「別にいなくても…じゃねぇ! 来い! お前の魔法をあいつらは知らない!」


「えっ、でももう使ったよ?」


「黙っとけバカ!」


 …魔族たちの声が聞こえた。さっき逃げたやつ合わせて、4人か。霧のやつと、遠距離攻撃のやつと、鎧が通用しないやつ。

 一応、残り1人は情報なしか。あいつらの話を鵜呑みにするのも危険だろう。



 


 追いかけっこは、巨体の魔族に回り込まれて終わった。

 国まではまだ遠い。援護は期待できない。


「フェド、炎を一つ!」


「了解!」


 ロアと俺は、炎魔術を真上に打ち上げる。作戦開始前に、霧の魔法についての情報を国に伝える方法は作っていた。


 それはすごくシンプル。炎を扱えるやつが、真上に炎を放つ。望遠魔術を通して、かなり雑にカテゴライズした情報が伝えられる。


 1つなら、霧を出すことのみの魔法。2つなら、即死級の追加効果持ち。3つなら、それ以外。


 ロアが2発撃ったので、俺のと合わせて3発になる。霧と一緒に起きた現象は、脳に直接話しかけてきた声と、後ろからの「待て」と、異常な心音。

 この三つは、別の魔法な気がする。


 これまでの経験から、魔族の魔法も基本は1人1種類のような気がする。

 そして、霧と3種の異常を別の魔法と考えると、これだけで4種。

 鎧を無効化したやつの席がない。


 つまり、三つのうち何かが霧の追加効果と考える方が自然。

 だから、国へは「それ以外」として伝える。


 …確実に国に帰れるなら、こんな雑なメッセージは使う必要なかったんだがな。

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