115 召集
「フェド、ロア。…単刀直入に聞くぞ。魔族と、戦えるか?」
そこは物置というより、捨て方に困っているものをまとめて放置しているような部屋だった。
窓の向こうの日差しが、漂うほこりを目立たせている。
学院にこんな場所があったとは。外観的には不思議でもないが、用事がない場所だったため近寄る機会がなかった。ひとけも、音も、全くない。
その質問に、じっくりと、向き合った。怒りだけで、答えを決めるわけにはいかなかったから。
ロアが、少しこちらを覗き込む。…あんまり、彼女を心配させるなよ、俺。
「内容次第です。捨て石にはされたくないので」
「フェドに同じく」
「そうか。ある意味、模範回答に近い返事だな。すごく複雑な気分だが」
「…ずいぶんと長い前置きですね」
「やかましい。…私は、反対なんだ。子どもを参加させることについて。
だが、仕事として、担当教師として、君たちに伝えなければならない。
軍からの依頼だ。最終目的は、森を燃やすこと。
ただし、その道中で、魔族が仕掛けてくる可能性が高い。ほぼ確実、との判断だ。だから、そうなったら撃退する。あわよくば捕獲。
そのために、優秀な風魔法使い、もしくは風魔術使いを探してほしいとのことだ」
「風なら、トーナも適任者なのでは? 役割は分かりませんが、人数を絞るとしても、俺より優秀ですよ。間違いなく」
「授業中、魔族という単語を出した。その時の反応を見て、お前たち2人を選んだ」
「…そう、ですか」
「これって持ち帰っていい話ですか?」
「いいや。今、この場で決めてほしい。かなり急ぎの案件だ」
「それなら、内容を頼みます」
「煙…というか、霧か。ともかく、視界を塞ぐそれを風で吹き飛ばしてほしい。それ以外だと、戦闘に参加というよりは、治療魔術での補助などがメインだ。
人数はまだ決まっていないが、鎧を着た兵が、お前たちを囲むような陣形になる。可能な範囲で危険な目に遭わないようにはしてくれるそうだ。
ただし、撤退判断は隊長に従うこと。途中で勝手に逃げられたら護ることも難しくなるからな」
「霧の対策ですか。…そこまでして、学生を選ぶ理由はなんですか?」
「風魔法や風魔術の訓練をしているやつは、かなり珍しいからだ。
裕福な家庭の学生ぐらいじゃないと、ほとんど存在しないと言ってもいい。
…単純に、戦闘で強くないし、生活にも活かしづらいからな。フォン・レイベルは中級風魔術を扱えるらしいが、彼女は土の国へ遠征中だ」
「あとは…。…いや、もう十分か。俺、参加します。人員は1人で足りますか?」
「できれば2人ほしい。ロア、どうだ?」
「あたしも参加します」
「…そうか。それなら、軍まで一緒に行こう。心変わりしたら、怖気付いたら、すぐに伝えてくれよ」




