103 焦りを
創作物も、魔法も、魔術も、料理も、動物も、景色も、想像できる刺激は全部試した。それなのに、昔のあたしは戻ってこない。
それら全てが徒労に終わっても、怒りすら湧いてこない。
どうすれば良い、どうすれば、ロアを取り戻せる。
フェドの告白でさえ、あたしの心は動かなかった。ロアは戻ってこなかった。…方法がダメなのか? 感情を呼び覚ます手段とは、なんだろうか。
景色と人を見ながら歩いていたら、カレーまんの店にたどり着いた。
「えっ?!」
それが、自分の声だと思えなかった。反射の、感情。
フェドの隣に座ってる人、誰だ? 女の人だ、少し上の歳だろうか。
…まだ、告白から二週間も経ってないぞ。気が早すぎないか、あいつ。
いや、そうじゃない。今、あたしは確かに驚いた、それに、焦りを覚えた。なんなら、今も焦ってる。
あいつがそんな簡単にあたし以外を好きになるとは思えない。昔からそうだったじゃないか。ずっとあたしのことしか、あたしの魔法しか見えてなくて、綺麗な目をしていて。
だから、安心しても大丈夫だ。
違うって、安心しちゃダメだ。必要なのは、焦りだ、この刺激だ。これなら、ロアを呼び出せるかもしれない。
チラリと、女の人がこちらを見た。バレてはまずい。これじゃあストーカーだ。…いや、バレてもそこまで問題ではないはずだろう? あくまで、偶然なんだから。
…今、フェドにそんなことしてると思わせたくないって、あたしは思ったな。
もっと、負荷をかければ、本当にいけるかも。
あっ、解散しちゃった。…追いかけるか?
いや、それだと刺激としては足りないな。部屋に戻って、想像だ、フェドがあたしから離れる想像。フェドがあたし以外を好きになる想像。
…あの魔族の魔法を思い出せ。あの時の感覚を、あたし自身で再現する。




