おっぱいさんおっぱいさんお答え下さい
「ちょっ、ちょっと落ち着いてください! 何か……こうなった心当たりとかないんですか?」
「……動かしているのは、あたしじゃないの……」
背中を優しく撫でられて、天花はぽつりと言った。
「じゃぁ……誰、なんですか?」
言葉の意味が分からず、ろみが首を傾げて聞く。しかし、天花の返事にろみの首はますます傾く事になるのだ。
「おっぱい自身……」
「……」
「おっぱいが、自我を持ってしまったの……」
「……」
「しかも左右で別々の……」
「ぷっ!」
「笑ったぁ?! ろみちゃん笑ったぁ?!」
「すみません左右別々とは思わなかったので……。と言うか自我を持ったもイマイチ信じられない事ではあるんですが、思い返せば左右別々に動いてましたね」
「そうよ、別々に考えて別々に動いたの。まさかあんなにパワーあると思わなかった」
「別々に考えて……?」
「そう、私には脳内に左右のおっぱいの声が聞こえるの」
「ぷっ!」
「また笑ったぁ?!」
「すみません直接脳内にとか本当にあるんだなと思ったら……。つまり? 意思の疎通は出来るって事ですか?」
「……出来てないよね。大人しくしてって何度も何度も言ったのに」
「でも言葉は通じるんでしょう? だったらちょっと話しあってみましょうよ」
「昨日の夜色々とやりとりはあったんだけど……」
「天花先輩の事だからきっとわぁわぁ言っただけでしょ? もっと建設的な話しをしてみましょうよ」
おっぱいと何を……と天花は思ったが、こんな気持ち悪い状況になってしまった自分を否定せずどうにかしてくれようとしているろみに分かったと頷いた。わぁわぁ言っただけと言うのも事実である。
「ごめんね……一緒に遅刻にさせちゃって……」
「もう良いですって。正直ちょっと興味ありますもん」
「まさか面白がってるんじゃ……」
「えーっと、ではおっぱいさんおっぱいさんお答え下さい」
「コックリさんみたいに言うのやめて? 普通に話せるよ」
天花は地べたに正座し、ろみはそんな天花の真正面に膝を抱えて座った。無意識か胸を隠す姿勢だ。
「何故、先輩の胸に入ったんですか?」
視線はちゃんと天花の双丘に向けられている。
「貴様は何故生まれたと聞かれて答えられるのか? と、左が申しております」
「な、なるほど? つまりおっぱいさんは外部から来たのではなく、先輩の内部から生まれ出たと……」
「自分は生まれたくて生まれたと思う! 君が望んだからだ! と、右は申しておりますが……あたし望んでなぁいぃよぉ!」
天花は丁寧に左右の言葉を代弁したが、自分の意見もしっかり付け加えた。
「うーん、全然良い事言いませんね。ではおっぱいさんおっぱいさん」
「その詠唱いらないってば」
「どうすれば先輩の胸から出て行ってくれますか?」
「貴様は心地良い玉座から退けと言われてはい分かりましたとすぐに動くのか? であればもっと自分の意思を大事にした方が良かろうな、と、左が申しております」
「さっきから左は私の事を貴様って……ぎゃぁ! 先輩の右ぱいが……!」
「そうだな! こんな狭いところに居るより外へ飛び出してみたいもんだな! と右が……動かないでぇぇぇ!!」
「またブラウスのボタンが弾けちゃうよ……!」
「ちょっ! 左まで動かないでよぉぉ!!」
天花は自分を抱き締める様にして左右の暴走を押さえ付けようとするが、天花の身体が不自然に弾む。ろみも天花を背中から抱き締めて落ち着かせようとするが左右のパワーが凄い。
「ごめんねろみちゃん! これあたしの意思じゃないからね!?」
「ううっ! すっごい弾力と質量で腕が跳ね返されてる……!」
ろみの細腕が、ほぼ弾かれていた。
『ふはは。封印という名の抱擁も悪くないがやはり窮屈よの。座りたい時に座ってこその玉座だ』
『自分は自由を求める……ふんっ』
ぐいんっ……!
「動かないでってばぁあああ!! ろみちゃん! もう! おっぱいに人格あるとかじゃなくて、単純に物理がついてこないのおかしいよねぇ?!」
「おかしいおかしい! だっ……ダメだ、全然ダメだ。先輩これしばらく学校休んだ方が良いですよ!」
「えっ! でっ、でも……!」
「こんな状態でも学校に来るなんて……! もしかして休みたくない理由でもあるんですか?」
「うっ」
図星であった。
おっぱいに自我があると言うとんでもない秘密を共有してしまったろみだ。今更何を隠そうかと天花は正直にそれを認めた。
「だって……だって今日は放課後に図書委員会の活動があるでしょう」
「ああ……」
みなまで言う前にろみは悟った様だった。




