動くおっぱい
ブレザーでまだどうにか抑え込んでいた天花のJカップ(推定)は、ボタンを失った事で一層まろび出た。
「何……今の……」
不自然なものを感じたろみは天花の胸元を凝視し、そしてすぐにそんな場合ではないと自分のブレザーを脱いで天花に掛けた。あまりにも……おっぱいの主張が強過ぎると思ったからだ。
幸い、ろみは天花と違って中学生の頃から胸は豊かな方だ。今なお成長し続けている自覚があったので制服も大きめのサイズを着ている。十分とは言えないがとりあえずは道行く人の視線を新たに集める事はないだろう。
「先輩、とりあえず歩きましょう」
だが今の時点で集めた視線からは逃れなくてはならない。
「うっ、うん、ごめんね、ありがと……」
「良いから!」
天花は引きずられる様にろみに腕を引かれて歩き出した。
気付けば右も軽くなった。起きたのだろう。
『動いて良かったのか?』
「ダメだよ!」
脳内に聞こえているだけの右の声に反応してしまう。独り言になってしまうがさっきの左の様に動かれたらそっちの方が大変だ。だいたい、あんな風に動けるとは思ってもみなかった。
「何がですか?」
ろみが振り返ったが歩みは止めなかった。
「ななななんでも! 何でもないよ!」
ろみは怪訝そうに眉を歪ませたがまた前を向いた。
『ズルいぞ、少し伸びだけさせてくれ』
「ダメッ! ダメダメッ!!」
「だから何が……」
あっという間に同じやりとりに戻った事に苛立ったろみが再び振り返ると、それはちょうど天花の右おっぱいが前に突き出し、ブラウスのボタンを一つ飛ばした瞬間であった。天花の胸の谷間が露わになる。
「痛いっ?!」
ボタンは前を行くろみの額に飛んでぶつかり、パチンとそこそこ痛そうな音がしたかと思うと跳ね返って天花の胸の谷間に潜り込んだ。
「ひぃぃぃごめんっ!! ごめんろみちゃん痛かったよね?!」
「いやいやいや痛かったけど痛いとかの前に……! うっ、とりあえず急ぎましょう! そしてそれちゃんと着て下さい!」
羽織っただけのブレザーに腕を通し、はだけたブラウスをきちんと隠す。天花は言われるがままにそうして、ずっと謝りながらろみに手を引かれて校門をくぐった。
ろみは校舎を目指さず、校庭の隅に並ぶ部室棟の裏まで天花を導いた。
「えっ、えっ、ろみちゃんどこ行くの? 遅刻しちゃうよ」
「何寝ぼけた事言ってるんですか、その格好で教室へ向かう気ですか?」
「へへへ変かな?!」
「変って言うかエロですよ! 変でもある!」
「ひぃぃえぇぇ?!」
「はいこっち!」
間もなく授業も始まるので朝練のある部活ももう残って居なさそうだ。ようやく人気のないところにやって来れた。
「はぁ、はぁ、ごめんねろみちゃん、ブレザー返さなきゃだよね」
「ちょっと天花先輩、さっきからズレた事言ってるの分かります? 絶対そんな事言ってる場合じゃないんですよ。とりあえず……申し訳ないんですが確かめさせてもらって良いですか?」
「な……何を……ってきゃああっ!」
ろみはおもむろに天花の両胸を両手で鷲掴みにした。
「ちょちょちょろみちゃ……!」
申し訳ないと断りを入れていたが、その手付きに申し訳なさは一切感じない。確かめる様に揉みしだき、ついにはブラの中まで侵入して直接それを確認した。
「パットでもないし……シリコンを入れたのならどこかに手術痕がある筈だけどそれもない。この自然な触り心地……これは……どう考えても本物!!」
「シリコンなんか入れないよぉ~! そんなお金ないし時間も……!」
「だとしたら! 私なら! 学校休みますよ! お母さん何も言わなかったんですか?」
「うっ、どこも痛くないのに休むって選択肢がなかったぁぁ~。お母さんも新しいブラジャー用意しとくからねって……」
「天花先輩の家族を悪く言いたくはないけど、母娘揃ってアホなんですか?」
「なんかちょっと笑顔が引き攣ってた様な気もする……」
「ごめんなさい、娘を傷付けたくなくてリアクションを間違えた優しい母なのかも知れません。でもたぶんアホはアホですね」
「酷いよ?!」
「だって……どこも痛くないとは言っても身体に異常をきたしているじゃないですか」
「異常?! ちょっと急激に成長しちゃっただけでっ……!」
「いやおっぱい動いてましたよねぇ?!」
「やっぱ気付いてたぁ?!?!」
もうおしまいだと天花は地面に突っ伏した。
「そりゃそうよね……。でも何で? 普通はおっぱいは動かないじゃない……だったら何かの間違いかなって思わなかった? 猫でもいるのかなーとか、そうは思わなかった?」
「……いやだから一応さっきめっちゃ確認させてもらったんですよ。おっぱいは本物でした。急に先輩の胸がその辺のグラビアアイドルよりデカくなってる時点でおかしいですからね。すでにとんでもないですからね。もうおっぱいが動いた程度では……ってガチで動いてたんですか?!」
「酷い! ろみちゃん誘導尋問したの?! うわぁぁぁぁ~んっ」
「そんなつもりもなかったんですが……え? 嘘ですよね?」
「嘘だったら良かった!!」
膝と額を地面に擦り付ける様にして泣き喚く天花に、ろみは優しく寄り添った。実はおっぱいが動いたと言うオカルトは半信半疑だが、どちらにしてもこんなに弱っている天花を突き離せないのだ。




