今でもブリーフ説
「見えて来た。見えて来ましたよ~。一度振られた田中先輩が、健気にも天花先輩の恋の成就の為に……! 私利私欲で自分のおっぱいを大きくしてくれと願った天花先輩の祈りの一億倍純粋で綺麗な祈りじゃないですか。これなら魔法少女が叶えてくれたのにも納得します」
自分の祈りを聞き届けてくれなかったウラメに対してずっと不信感を抱いていたろみだったが、やっと腑に落ちたとポンと自分の手のひらに拳を落として頷いた。
「じゃぁ純粋に上手く行きますようにって祈ってくれれば良いじゃない! なんでおっぱいを大きくするって方法にしたのよぉ!」
「相手が晃芽先輩なら効果覿面ですからね。あながち間違っていませんよ。健気な田中先輩の事だからおっぱいが喋れば寂しくもなかろう、まで思ってそう」
「ウザ過ぎるーっ!! あと田中の評価高過ぎだから! 別にそんな健気な奴じゃないから!」
「あれ? でも待って下さい?」
もはや天花の反論に何の価値もないと思っているろみが止まりたいところで止まる。
「な……何?」
「それなら、やっぱり天花先輩が晃芽先輩とくっ付けば解決……の筈なのに魔法は解けていない」
「はっ! そうだ! その通りじゃない! やっぱりその仮説は正しくないって事ね?」
天花に詰められるがこの仮説を捨て切れないろみが言う。
「おっぱいの大きい天花先輩と付き合いたかった?」
「いや微塵も純粋さないよ?! 田中はあたしのおっぱいがどうであろうと……!」
一体何を言おうとしたのか。自分で田中を褒める様な事を口走りそうになったのに驚き、言葉を飲み込む天花。しかし、ろみには何かしら伝わってしまう。
「天花先輩って……、田中先輩に厳しく当たるのに結局信じてますよね」
「ただの幼馴染だけど、付き合いは長いから、それで……」
「一緒にハチコを育てたり、あの時、ハチコの事で田中先輩が悲しむ事を避けようとしたりしました」
「ハチコの件はたまたまその時居たのが田中だっただけで、別に、それがろみちゃんでも一緒だし」
「いつ告白されたんですか?」
「…………中学の時」
もう喚いても無駄だろうと判断した天花が大人しく事実を告げる。
「どうして断ったんですか?」
自分の推測に自信を持っていたろみは、特に驚いた様子もなくさらりと繋げた。
「あ……当たり前でしょ?! だってただの幼馴染なんだから! ケンカもいっぱいしたし寝顔も知ってるし、小さいころはお風呂も一緒に入った事あるんだよ?! 中学までブリーフだったのも知ってるし、たぶん今でもブリーフなんだろうなって確信がある! 幼馴染でしかないよ!」
「ブリーフのエピソードまで言わなくて良いですよ……。しかも今でもブリーフである事を確信しているとか、幼馴染だとしてもかなり仲良い幼馴染ですよ? 心地良いその関係を壊したくなかった……とも言えませんか?」
「そう言うんじゃない!」
確かにお風呂やブリーフの事まで言うんじゃなかったと、天花が顔を赤くして全力で首を振る。
「うーん、天花先輩のおっぱい大きくしたの田中先輩説良い線行ってたと思うんだけど……ん? ちょっと待って下さい?」
「今度は何? ちゃんといつも待ってるよ」
「田中先輩、まだ天花先輩と晃芽先輩が付き合う事になったって知らないじゃないですか! 確認出来たら魔法解けるんじゃないですか?」
「え、じゃあ……わざわざ田中に晃芽先輩と付き合う事になったって言うわけ?」
「そうですよ、抵抗あるんですか?」
「……別にないけど。聞かれてもないに言うのはちょっと……。ろみちゃんから言って?」
「ダメです。こう言うのはちゃんと本人から伝えた方が間違いありませんよ。変に疑われて解けないかも知れないじゃないですか」
「だ、だって! なんか浮かれて報告してるみたいで痛い女じゃない?」
「大丈夫! 天花先輩はすでに色々と痛いところありますから!」
やたらとごにょごにょと歯切れの悪くなった天花にろみがぴしゃぴしゃと遠慮なく応戦するが、なかなかに攻撃力が高い。
「どこぉ?!」
「顔だけの晃芽先輩と付き合いたがるところとか……てか、そんなのどうでも良いですからメッセなり電話なりで報告して下さい」
「今?!」
「とっととどうにかしたいなら延ばす必要はないと思いますが」
「……なんか……、ハチコの事で文句言われそうだから今日はもう話したくない」
「はいはい、天花先輩の好きなタイミングでどうぞ。まぁこれはあくまで仮説ですけど試す価値はあると思いますんで。ダメだったらまた考えましょう」
もはや何も思い付かない天花は大人しくろみの提案を試してみるしかない。
だが、何故こうも気が重いのだろうか。憂鬱な気分になりながら帰宅し、ただいまと玄関を開けると……。
にゃぁ~!
「ハチコ!」
ふわふわで、綺麗になったハチコが出迎えてくれた。
「わぁ~、お母さんハチコを洗ってくれたんだ! すんごい可愛い! 白い部分こ~んなに白かったんだね~」
「そうよ~」
玄関先ではしゃぐ天花に、キッチンから母の声だけが聞こえて来る。
「一応お父さんに了承貰わなきゃいけないし、印象良くしないとね~」
「ありがとう!」
天花が喜んでいるのが分かるのか、ハチコもご機嫌で盛大に喉を鳴らせては頭をすり付けた。
「ふふ、よしよし、こんなに綺麗でふわふわになるなんて、田中にも見せて……」
一瞬だけ忘れていた遂行しなきゃいけないミッション。それを思い出し気が重くなった天花はハチコを慰め役にしようと持ち上げた。
「おいでハチコ、私の部屋でいーっぱいなでなでしてあげるからね~」
にゃーん!




