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第二話 「侵食無効化の特異体質」

帰途の最中、改札を出ると、目の前を大勢の悲鳴に続いて人々が通り過ぎていった。


その方角に自宅があるので、群衆が来た方に行き、駅のロータリーの近くにある交差点を通る時、俺はようやく人々が悲鳴を上げた原因を見つけた。


(なんだあれは……!まさか、あれがヴァリァス……!!)


写真でしか見たことがなかったが、間近で見てみると壮大だった。あまりにも禍々しいそれを観察していると、黒く染まった地面の上に異形の化け物がいるのに気づいた。


形は……ムカデの後尾にサソリの尾をつけたようなものだ。

そのムカデと対峙しているのは、一人の男だった。後ろ姿は普通の成人男性だが、剣を持っていて、いかにも特殊部隊という感じだった。


両者はピクリとも動かず、氷漬けにされたかのように止まっている。するとムカデが滅茶苦茶速い動きで男の持つ剣を空高くに吹き飛ばした。


(なんなんだコイツは……ッ!)


後ずさると足元に剣がバキンという音を立てて地面に突き刺さった。

「怖っ……!」


とりあえず俺は落ちてきた剣を拾い上げ男の元に向かった。

化け物が目の前にいるにも関わらず平気な顔して剣を持ってきた俺を見て驚いたのか、男は目を丸くした。

「ありがとう。でも君は早く逃げなさい。侵食されたら終わりだ」

「……これは要らないんですか?」

「それは電気を流して初めて戦える剣なんだ。電池が切れては使い物にならん」


こうして話している間もムカデはじっとしていた。俺は剣を持っていても戦闘はできないため、男に剣を渡そうとすると、ムカデが突如として動いた。

「早く逃げろ!」

男が叫んだ瞬間、声が低く引き伸ばされていくような感覚に陥った。


グォォォォォォ_____。


俺はムカデの動きがみるみる遅くなっていく。

俺は何も考えずに持っていた剣で、ムカデの足に斬り込む。


「うっ……!」

遅く見える世界でも脚の硬さは異常だ。まるで割り箸のササクレでペットボトルを貫こうとしているような手応えだ。


(刃が入らないからギコギコもできないな……)


とりあえずムカデの背後にまわると視界は元通りになり、周囲の物体はいつも通りの速さで動き始めた


ムカデは消えた俺を探し始め、くるっとこちらを向いた。

「俺からやる気か……!」

再びムカデが動いたと思えば、俺ではなく俺の後ろにあった信号を破壊した。


(信号……なんでだ?)


「動くもの」を優先的に攻撃するのだろうか。それならさっき男より動いていた俺を攻撃しなかったのは不自然だな。今もそう、信号機を破壊したが俺は襲わなかった。


(なんだ……?アイツが俺を攻撃したキッカケは何だ……?)


剣を構えると、こちらに猛スピードで突撃してきた。勝手に視界が遅くなる。何故か俺の体はいつも通りに動ける。しかし、剣を構えた時に一瞬、目に陽光が反射したせいで反応が僅かに遅れた。


(さっき剣を渡そうとした時……信号の光……)


「なるほど……読めたぞ。お前の習性が……!!」

おそらくアイツは光に反応して攻撃する習性がある。さっき剣を渡そうとした時に剣を斜めにしていたから陽光がアイツの目に入った。信号も同様だ。今、剣を構えた時も。


(それが分かれば打開策はある)


問題は弱点がどこなのか、それがわからないと決定打には欠ける気がする。

確認のため剣で光を反射させた。案の定ムカデは突撃した。だが視界は遅くならず、危うく俺は死にかけた。

「はぁ……はぁ……!」


後ろにあった電柱を破壊したことで電線が千切れた。その電線が剣に巻き付き、俺は剣を握ったまま宙に留まった。剣を振るが、絡まっているため思うように解けないのだが、電線に触れるわけにもいかない。


(この電線……剣に電気を流してるのか?)


剣を手前に引くと電線は「バチッ」と音を立てて剣から離れた。ムカデがこちらに向かってサソリの尾で刺そうとしてくる。

目の前に命の危機が迫っていても関係ない。アドレナリンが俺を支えてくれる。


「食らえーーーーーッ!!!」


渾身の力で頭に突き刺す。ムカデは少し暴れた後、砂のように崩れた。

「ふぅ……」

一安心していたその時、視界の端で動くなにかを見つけた。


再化結晶__。


ヴァリァスの化け物を倒した際に出てくる暗黒の果実だが、勿論食べることはできない。


俺は折れた剣を握りしめ、結晶に近づき剣で突く。

壊した途端、地面が抉られ、バランスを崩して尻もちをついてしまった。しかも吐いていた靴までボロボロになってしまっている。靴底が無い。


(おかしい……足が侵食されてないぞ?)


周囲を見渡すと、侵食されていたところの地面だけが綺麗に無くなっていた。ヴァリァスに侵食された部分は果実を破壊した時に共に消滅のするのだ。

不思議なことに自分の足は正常だった。おそるおそる足を触ってみるも、感覚はあるし傷もなかった。


戦闘が終わり、一息ついているとジープみたいな車が止まった。降りてきたのはヴァリァス特殊部隊の人間でさっきの男の方にも何人か向かっていった。

「お怪我はありませんか?」

「あ、はい。特には……」


その人たちは俺の靴底が無いのに気づいて足を確認し始めた。そして、何も無いことがわかると誰かに連絡し始めた。適性がどうとか言い始めた。

その場で待機してほしいと言われて待っていると、一人の男が俺のとこに来た。


「君が倒してくれたのか。心から感謝する」

「あ……はい」

「さて……どうやら君は少し特別らしいな。後日礼をしよう」


男の意味深な発言の真意はわからないが、とりあえず養成高校の推薦をもらったのだった。

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