第三話 「加速した時の中で」
養成高校の生活にも慣れてきた。毎日平和だが、平凡な人生ですごく楽しい。
「次は体育か。いくら特殊部隊に入ってるとはいえ、運動は苦手なんだがな……」
他の人に溶け込むようにして校庭に出て待機していると、担当の先生が変な道具を持って来て現れた。
「全員、この風船のついたヘルメットを被ってゴムの剣を一本取れ。そして後ろにコーンが見えるだろう?そのコーン内で適当に距離を取るんだ」
指示通りに散らばった後、先生は大声で叫んだ。
「よし!今から互いの風船をその剣で割れ」
俺の前にいた奴は一早く反応し、近くにいる生徒に襲い掛かった。瞬く間にあちこちで戦闘が起こる。
端の方で見守っていると一人の生徒によって犠牲者が続出していた。
「アイツはたしか……相田想決だっけか」
ヤツは暴れ回り、あれよあれよという間に俺以外の生徒を倒してしまった。
「しょうがない。相手するか」
「フッ!!」
ヤツは自分の振った剣が空振ったことに気づき、一瞬だけ困惑した顔を見せた。すぐにキリっとした表情に戻り、再度俺に剣を振り下ろした。
「加速発動____!!!!」
全てがゆっくりと動く。全てが。風の流れも、時間さえも。何かもがこの俺の目で追えるようになる。
「終わりだな」
パァン!!!
その音を合図に訓練は終わった。授業が終わって戻るときに靴箱の前で想決は俺に話しかけてきた。
「君、僕より動けるんだね」
「たまたまだ。俺は運動神経は悪い方なんだ」
想決は穏やかな表情を向けていたが、俺が謙遜すると嫌味に聞こえたのか、眉間のあたりに少しシワが寄っているのが見えた。
「まあヴァリァスに適性がある者は身体能力が高くなるからね。君の方が一枚上手だったんだよ」
「そうなのか?」
「知らないの?身体能力が上がる者もいれば、動体視力が飛躍的に上がったり、超人的な精密射撃ができる者もいるのさ」
丁寧に教えてくれた想決は早足で教室に戻っていった。
(個人的には速く動くよりも、最強クラスのチートスキルみたいなのを期待していたんだが……まあ無いよりはマシか)
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