#46 暗殺者
~和装の男 邪教団アジト周辺~
「うん、此処っぽいなぁ!」
建物の近くまで飛んでみると、こらまた中々に禍々しいっちゅうか、趣味が悪いっちゅうか。
まぁ噂やと邪教団、やったっけ?
そないな連中が人攫いしてヤバいことやっとるっちゅうか。
「取り敢えず此処に降りて・・・ん?」
なぁんか僕意外にも建物の周り飛んどる奴がおるな。
「さて・・・。」
ちょっと探り入れて見よか。
「・・・。」
懐から紙の札を取り出す。
それを額に当て・・・。
「開。」
僕が念を込めて術を唱えると札が光り出す。
「降・憑・府・造・酉・操・察・共」
唱えているうちに札が手から放れ、浮遊しながら光りに包まれて粘土のように形を変えていき・・・。
「来たれ、八咫烏。」
札はカラスに姿を変えた。
「ほい♪」
僕が指で前方を指すとカラスは飛んでいる相手の元に向かって行った。
「さあて?」
右手の親指と人差し指で輪っかを作って逆手にしながら右目に当てる。
すると当てている右目に遥か前方の風景が見えてくる。
今飛ばしたカラスは監視用の式神、見た目の通り空を飛べる上、視界も共有してくれる優れものや。
で、見えたもんはと言うと・・・。
「・・・お?」
どうやら鳥・・・って訳でもないな。
アレは恐らく・・・。
「うん、予定変更。」
最初はすぐにでもアジトん中乗り込んで連中の様子見に行こう思ったけどや~めた。
~銀蠍 邪教団アジト~
「ッ!!」
まただ!!
奴の姿が消えた!!
「くッ!!」
周りを見渡すと丁度死角になりかけていた右側に奴が居たことに気づいてなんとか奴の横振りを回避する!!
「くそッ!!」
「・・・。」
私の様子もお構いなしに暗殺者は淡々と構えていた。
「ッ!!?」
また奴の姿が消えてる!?
「こいつッ!!」
破れかぶれに斬りかかるが奴の姿が消える。
「まただッ!!」
魔道具か!?
いや、そんなものを使うような素振りもなかった!
だとすれば奴固有の能力?
「ッ!? おいッ!!」
暗殺者は猫の背後を取っていた!!
「おっと!!」
猫は前転気味に前に跳んで回避した。
「感謝しますよ銀蠍。」
「くッ・・・!」
まさか猫に礼を言われる日が来るなんて・・・今日はなんて厄日だ!!
「勘違いするな、奴を倒すためだ。」
「そういうことにしときます、けど今の連携いいかもしれませんね。」
「?」
猫が私の横で構えながら妙なことを口走る。
「奴がどうあっても死角から仕掛けてくるなら、私たちがお互いを三人称視点で見ていれば死角から仕掛ける事は出来ないですから。」
「却下だ。お前は信用できない。いつ命綱を放されるか分からんからな・・・ッ!」
また奴の姿が消えた!!
「利害で考えて下さい? 今私達のどちらかがやられれば、奴を倒すことは不可能です。それで困るのは私も・・・銀蠍ッ!!」
「ッ!!?」
猫が私の上を見ながら声を掛けて嫌な予感がしたので横に跳んで回避すると暗殺者が上から降ってきた!!
「・・・。」
「ふ。」
私が黙ったまま見て考えていることを察したのか、猫は鼻で笑う。
「ね? 何のメリットもない裏切りなんてやるだけ損でしょ? 貴方がおとなしく殺されたいなら話は別ですけど・・・。」
「くッ・・・!」
こいつの口車は信用出来ない。
それは私が一番よく分かっているつもりだ。
だが奴が言っていることも事実だ。
現状、どちらが欠けても奴を倒すことは不可能。
正直腸が煮えくり返りそうな提案だが仕方ない・・・!
「・・・今だけだ。」
必死に怒りを抑えながら暗殺者に構えなおす。
「!」
また暗殺者は姿を消す。
「右です!」
「ッ!!」
右に向き直って身構えるが・・・!
「・・・?」
確かに暗殺者はいた。
だが仕掛けてくる様子もなくまた消えた!
「くッ・・・!」
それから暗殺者は私たちの周りを旋回するように現れては消えてを繰り返す。
「くそッ・・・! 遊んでるのか?」
「落ち着いて、相手の思うつぼですよ。」
忌々しい気持ちで奴に身構えているうちに私と猫は背中合わせの態勢になる。
「・・・?」
なんだ?
姿を全然現さなくなったぞ?
どういうことだ?
「ッ!!? 上です!!」
「!!!」
猫の警告ですぐに奴が上空に居る事に気づき、そっちを見ると、奴はすでに手を羽ばたく鳥のように広げながらナイフの雨を降らせてきた!!
「くっ!」
全力で跳びナイフの雨の範囲から逃れたあと、頭から地面に飛び込むような形になったので手で受け身を取りながら前転気味に受け身を取る。
猫はと言うと・・・。
「あ”ッ! ぐッ!!」
同じように回避はしていたようだが、足にナイフをわずかに受けたみたいだ。
恐らくは先ほどのダメージで万全ではなかったからだろう。
「くそッ!」
暗殺者が地面に着地する刹那を狙って全力で走りながらナイフで斬りかかるがまたしても姿を消されて逃げられる!
相も変わらず鬱陶しい・・・!
どうやって姿を消して・・・
「!!」
いや、待て!
姿を捉えられないのなら・・・!
「・・・。」
目を閉じで米噛みに指を当てて魔覚に意識を集中させる。
だが・・・。
「・・・!?」
居ない!?
「?」
おかしいと思って辺りを見渡すと・・・。
「・・・何故だ。」
奴は尚も現れては消えてを繰り返して私たちの周りを旋回している。
まさか感知出来てないのか!?
「魔力が感知出来ない・・・魔力が感知できないんですね?」
猫は確かめるかのように私に問いかけるが・・・!
「右だ!! 猫!!」
「くッ!」
咄嗟に後ろに跳んで回避する猫、だが・・・。
「ぐッ! うくッ!」
先ほどナイフが足に刺さった痛みで上手く踏ん張れなかったのか、後ろに転んで後転しながら起き上がって体勢を立て直す。
「・・・。」
「・・・。」
私と猫は再びお互いに向き合いながら周りを見て奴が何処から仕掛けてくるかを警戒しながら構える。
「さっきの話の続きだ。お前、何か分かったのか?」
「恐らくは『魔力鎮静』です。」
「魔力鎮静・・・?」
馬鹿なことを言う。
魔力鎮静は魔力を抑えて気配を消すだけに過ぎない技だ。
それでは奴の姿を消す能力に説明は着かない。
魔力鎮静に姿を消す程の力はないはずだ。
「聞いたことがあります。極力まで魔力鎮静を極めた者は、気配どころか、『存在』すら認識出来ないと。」
「・・・。」
にわかに信じがたい話だが現にこの状況が出来ている以上、筋が通る話だ。
だが。
「だったらどうするんだ。」
そう、奴の能力のからくりが分かっていても対策が出来た訳じゃない。
視界に捉えることも困難、かと言って魔覚で位置を割り出そうにも探知に引っ掛からない状況は変わらないからだ。
「考えがあります。」
「何?」
「私を護って下さい。」
「・・・冗談で言ってるのか?」
「こんな状況で言うと思いますか?」
相も変わらずふざけた奴だ。
「ッ!!」
殺気を感じる!
「!!?」
奴が向かったのは猫、右後ろからだッ!!
「猫ッ!!」
咄嗟に声をかけるが・・・!
「!!?」
猫は避けも防御をする素振りも見せなかった!!
「くっ!!」
考えるより先に私は猫に迫る敵のナイフを自分のナイフで止めていた!
「・・・ふっ。」
それを猫は横目で不適な笑みを浮かべていた。
「ぐッ・・・!」
何処までも忌々しい奴だ。
どうあってもこいつが望んだかのような形に事が運ばれていく・・・!
「その調子です銀蠍、奴の能力の根源が魔力鎮静である以上、殺気によって無意識化に高ぶった感情の中では使えない。故に攻撃を見切ることは容易い事です。」
「だからなんだ。」
猫に反論する。
「お前を護って何の意味がある、お前がこの状況を打破出来る何かを出来るって言うのか?」
「魔法を撃ちます。それで、奴の能力を一瞬ですが完全に封じて見せます。だからその時は頼みます。」
「・・・。」
奴が考えていることは分からない。
全く信用できない。
しかし、それに縋るしか今の私に生存の可能性は低い。
こいつは復讐したくてたまらない相手だ!
今すぐにでも殺してやりたいくらいだ!
だが今の状況は、それすら叶わず犬死する状況・・・!
私にとっては何があってもそれだけは絶対にあってはならない!!
「くッ・・・!」
こいつに従うしかない!!
「業火」
「!!」
猫が魔法を詠唱した瞬間に暗殺者は、あろうことか正面から仕掛けてきた!!
「ッ!」
猫に向かって放ったナイフを止める!
「くッ!」
魔力鎮静の謎を解いて下手な小細工が無駄と分かって強引に攻めてきたか!
「ッ!!?」
奴の懐からもう一本のナイフが!!
「くッ!!」
頬を掠めたがなんとか回避する!
「杖」
「くそぉッ!!」
右と左斜め上から来るナイフの斬撃をナイフと毒針で止め、それならばと仕掛けてきた奴の足払いを跳んで回避してナイフを振り下ろす!
「このッ!!」
ナイフを防がれてもう片方の毒針で刺しにかかると暗殺者は羽のようにふわっと後ろに跳んで回避する。
「放出」
「!?」
もうすぐ詠唱が終わりそうになったその時だ!
奴は流れるような足さばきで迂回して右に回り込むと、一気に地面を蹴って仕掛けてきた!!
狙いは猫だ!!
「!!」
瞬時に猫にやられた今までの事を思い出す!
だが・・・。
「ぐぅッ!!!!」
暗殺者のナイフを持った腕を肩を使った体当たりで弾いて軌道を逸らした!!
そして・・・!
「爆炎榴弾!!」
猫は炎の砲弾を放った!
「!?」
だがその炎の向かった先は・・・!
「何!?」
私は思わず上を見る!!
そう上だ!!
炎は天井に向かってまっすぐ飛んで行き、 天井の岩壁に物凄い勢いで激突する!!
「何をやって・・・ッ!?」
猫のやりたいことを理解した!!
そうか、だから上なのか!!
その証拠に天井の岩盤が崩れ落ちてきた!!
考えてみれば当然だ!!
ここは地下、そんなことをすれば地盤が崩れ落ちて来るのは誰だって分かることだ!!
だが、だからこそこれをやったんだ!!
「くッ!!」
降り注ぐ岩盤の破片の岩の雨に思わず目の前を手で覆い、防御の姿勢を取るが・・・!
「前を見てください!! 銀蠍!!」
「ぐッ・・・!」
言われずとも前を見る!
目の前に合ったのは予想通りの光景だった!
暗殺者が先ほどの私同様に怯んでいる!!
だがそこに『大きな意味』があった!!
『怯む』ということは、すなわち精神に大きな動揺があるということ!
奴は今、姿を消すほどの魔力鎮静をできていない!!
それを見て確信した!!
『今しかない』!!!
「ッ!!」
即座に距離を詰めてナイフで暗殺者に襲いかかる!!
かろうじてナイフを止めた暗殺者だが・・・。
「まだだッ!!」
これで逃がすほど私も 甘くはない!!
即座に 左手に持っていた毒針で止めを刺しに掛かる!!
だが鍔迫り合いを不利と即座に判断した暗殺者はすぐに地面を蹴って距離を取る
「!!!」
また奴の姿が消える!!
だが・・・!
「させるかッ!!」
私はすぐに距離を詰め、奴の右手首を掴んだ!!
これでいい!
視覚や聴覚で奴の存在を認識できなくとも、直接触れて奴の存在を認識し続ければ、もうやつを見失うことはない!!
たとえ姿が見えなくともな!!
「終わりだッ!!」
すぐに奴の脳天に向かって逆手に持った左手の毒針を突き出す!!
だがそうはさせまいと奴も左手に持った ナイフで応戦して毒針を弾く!!
「ッ!!」
そんなのは予測済みだ!!
けど一度弾かれたからと言って諦めるつもりは毛頭ない!!
「くッ!! ぅぅッ!!」
私と暗殺者は幾重にも渡ってナイフと毒針で攻撃を撃ち合う!!
だが少しして違和感に気づいた!!
「・・・?」
猫が何も横やりを入れてこない・・・!
奴もこの場の生存を考えればこいつを倒したいはずだ!
魔法の詠唱ぐらいしていてもおかしくないというのに何もしてくる気配がない!
「?」
そのわずかな疑問が私の視線を暗殺者から背後にずらしてしまう。
だがこの戦いでそれが愚かな行為だということをすぐに思い知らされる!!
「ッ!!? くッ・・・!」
隙をついたやつのナイフが私の脳天に 迫ってきていたのを察知してかろうじて毒針で止める!!
「ッ!? ぐッ!!」
だがその私の動揺による戦闘の精度の鈍りを奴は見逃さず、私の腹部を蹴って掴まれた腕の拘束を振りほどいて距離を取ってしまう!!
「しまったッ!!」
またやつを見失う!!
焦った!
だがそれ以上に怒りが沸き上がった!!
「猫!! 何故援護しないッ!!」
そう言って背後を振り向いた瞬間・・・!
「!!?」
今の私の思考の中ではありえない光景が目の前にあった!!
「わッ、バレた!! おデブ、急いで!!」
「ひぃぃッ!」
猫はアルトを背負い、その横で弟子娘を背負った偽アルトと共に部屋の出入り口に向かっていた!!
「猫ッ!!!」
「ふふ・・・!」
私が怒号を飛ばすと、猫は不敵な笑みを向けてきて・・・!
「言ったでしょ? 『何のメリットもない裏切りなんて、やるだけ損』って♪」
「貴ッ様ぁぁぁぁぁッ!!!」
すぐに猫を追い掛けようと走り出すが・・・!
「!!」
背後から殺気・・・!
「くッ!」
予想通り来ていた暗殺者のナイフを自分のナイフで止める!!
「くッ!!」
暗殺者がまた襲い掛かってきたのを察して掴もうとするが、奴もそれが分かり切っているのか、すぐに鍔迫り合いをやめて離れる!!
「くそッ!!」
その場に構えなおす!
今のまま猫を追いかければ確実に背後から奴に刺される!!
「それじゃ、あとは頼みます♪ 約束通りね♪」
「ッ!!」
最悪の捨て台詞を吐いて猫は逃げて行った!!
「あぁ・・・ああぁ!!」
ダメだ、抑えきれない!!
「あああああああぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
屈辱を抑えきれずに口から全力で吐き出しながら叫ぶッ!!!!!
「あのクソ猫がああああぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
やっぱりあいつはそう言う奴だったッ!!!!!
~ルタ 邪教団アジト外~
「おデブ急いで!!」
「待ってくださいよぉ姐さ~ん!」
「姐さんって呼ばないで!!」
メロを背負ったギャバラと一緒に邪教団のアジトから脱出すると急いで乗ってきた馬に彼を乗せる!
「ゼヘェ・・・ゼヒィ・・・!」
「こんな距離走ったぐらいで何息切れしてんのだらしない! 体力無いの!?」
疲れてるせいでメロを馬に乗せるのにもたついているギャバラに葉っぱをかけるように捲し立てる!
「!!?」
さり気なく魔覚に集中すると魔力を感じた!!
何かが近づいてくる!!
「ハイヤァ!!」
「姐さん!!?」
驚くギャバラを尻目に馬をすぐに走らせる!!
魔覚で探知した魔力は空から来ていた!!
おそらく空から獲物を襲う鷹の如く襲撃してくるはずだ!!
それが分かってすぐにでもその軌道から逃れようと馬を走らせていた!!
だが襲ってきた敵は恐ろしく正確に追尾してきて!!
迫ってきていた!!
「炎 杖 放出・・・!」
すぐに杖を取り出し、襲ってくる敵に対して魔法を詠唱するが間に合わない!!
「ッ!!」
敵は私が視認する間もなく頭上を通り抜けていく!!
すると・・・!
「あ!!」
後ろに乗せていた彼の姿がなかった!!
「ッ!?」
前方を見上げるとそこには黒いハングライダーで空を飛んでいるマントの人物がいた!!
「ハイヤァッ!!」
杖を鞭代わりにして馬を奮い立たせて全力で走らせる!!
「炎 杖 放出・・・炎球!!」
魔法を放つがかなりの高さまで高度を取られて全然届かない!!
「ハイッ!!」
それでも 突き放されまいと必死に馬を走らせる!!
『こいつはお笑いだ!! 非道外道な猫キャットにまさか想い人がいるとはな!!』
「・・・。」
ふと銀蠍の言葉が脳裏によぎる。
「・・・ふっ。」
思わず鼻で笑ってしまう。
銀蠍の言っていることが滑稽だったからだ。
だって私は・・・。
「炎 杖 放出・・・炎球!!」
諦めずに彼をさらったハングライダーに向かって 魔法を放つ。
「はは・・・。」
本当に滑稽だ。
『自分』が。
「ははは・・・。」
なんでこんなに必死になっているのかが分からない。
それでも・・・。
「お兄ちゃんッ!!!」
必死に追いかけながら彼を呼んだ!!
~夜鷹 邪教団アジト周辺 上空~
「やれやれ・・・。」
銀蠍には下手な横槍を入れるなとは言われていたけど勝手なおせっかいで外を見張っていたら気を失ったアルトと一緒に女が人質の弟子娘 を連れてアジトから出てくるもんだから驚きだった。
「ハァ・・・詳しいことはよく分かんないけど、まさか銀蠍がしくじるなんてね。」
彼女のことを過大評価するつもりはないが彼女は僕たちの間でも抜きん出て任務の遂行力は高かった。
よほど今下で追いかけている女が頭の切れる奴だったんだろう。
けどさすがに空を飛べる僕と飛べない自分。
こんな状況じゃあどうする事も出来ないみたいだ。
全く、結果的に銀蠍が戻ってくるのを待ってたことが万が一の保険になってしまったみたいだ。
下を見るとだいぶ追手の女は後ろの方にいた。
恐らくは馬が疲れてきたんだろう。
「よし。」
念のためもうちょっと距離を離してから振り切って
「えらい面白いことしとるなぁ♪」
「!!?」
声が聞こえた!?
ありえない!!
こんな鳥みたいに空を飛んでいる人間なんて今の状況では僕以外ありえないからだ!!
「!?」
声のする右側を見ると妙ないで立ちの男がいた!
ダボったい黒装束の服に、妙な棒状の杖を持っている男だ!
しかも何を使って空を飛んでいるかと思えば、人一人が乗れてしまうぐらいの妙にでかい折り鶴の上に乗っていた!
「誰?」
「そんな些細なことはどうでもええやん♪」
動揺を抑えて冷静に問いただすと男は気さくな笑みではぐらかす。
「だったら何の用? 僕いま忙しいんだけど?」
「せやなぁ、忙しいところ悪いけど・・・。」
「?」
男は顔を少し俯瞰気味に伏せると・・・。
「あんた悪者みたいやし、邪魔させてもらうわ。」
「!!」
男は 薄目で睨むように笑みを浮かべながら鋭くこっちを見ていた!
「くッ!」
すぐに懐からナイフを取り出して男に投げ飛ばす!
だが・・・。
「!!?」
投げた数本のうちの二本ぐらいが男へ迫っていたのに寸前で何かにぶつかるように弾き落とされた!
「!!」
よく見ると男の目の前に亀の甲羅のような形をしたガラスみたいな壁があった!
「はぁ、いきなり攻撃とか節操ないな~あんたぁ。」
男は余裕そうに呆れた顔でため息をついていた。
「くそ。」
けどだいたいの男の正体はつかめた!
おそらくこの男は東国スサノオの『結界師』だ!
「一応聞くけど、なんで邪魔すんの?」
「あー・・・今それ聞いちゃうん?」
「答えてよ。」
すっとぼける男に対して答えを催促する。
「なんかあんたら、お互い訳ありみたいやし、余所者の僕が入る余地もないんやろうけどな?」
「分かってるならなんで?」
「『劣勢でかわいそうな方についてやった方が恩を売れるから』♪ って理由じゃダメなん?」
「ハァ・・・。」
ふざけた答えに呆れてため息が出る。
「なるほど、つまりは『通りすがりのおせっかい焼き』ってとこ?」
「そういうこと、や♪」
そう言いながら男は白紙の札を数枚取り出す。
「降・憑・府・造・酉・操・襲・群」
「!」
男が魔法とは違う、妙な詠唱をすると取り出された札が光り始める!
「はッ・・・。」
鼻で笑いながらすぐにハングライダーの起動を変えて男から距離を取る!
攻撃が通らないとあれば付き合う必要はない。
逃げるが勝ちだ!
「来たれ、八咫烏」
男が詠唱を終えると光りながら男の周囲に浮かんでいた札だった光が形となり鴉になった!
「逃げられると思わんといてな♪」
そう言うと男は軽くこちらを指さす。
「!!」
すると周囲に作られた鴉が一斉に僕に向かって襲いかかってきた!!
「くッ!!」
右へ左へ、上へ下へ、 ハングライダーを駆使して何とか鴉の追跡を振り切ろうとするが、小さい鴉たちの方が小回りがきくせいか、全然 振り払えない!!
おまけに鴉のくせに異様に飛行速度が早い!!
「くそッ!!」
振り切るのは不可能と判断して鴉に向かってナイフを飛ばす!!
「クガァッ!!」
ナイフが当たると鴉は軽い断末魔を上げた後に元の紙の札に戻ってしまう。
だが・・・!
「!!?」
撃ち漏らした一羽がぶつかるようにハングライダーの下のアームで掴んでいたアルトに当たる!
「?」
それもまた、何故か元の札に戻ってしまう。
「何? 一体何をしたい、の??」
丁度左上に居た男に皮肉を吐きかけるが、男の恰好が妙だった。
「・・・。」
男は杖を肘に抱えたまま、両手の二本指を顔の前で交差させた妙なポーズをしていた。
「!?」
まさか・・・!
「くッ!!」
嫌な予感がしてアルトに手を伸ばすが・・・!
「開ッ!!」
「うあぁッ!!」
男が妙な詠唱の一声を発するとアルトから謎の力が全方位へ弾け飛んだ!!
「ッ!!?」
ハングライダーのアームの拘束を弾き飛ばしたアルトはそのまま落下する!
「くそぉッ!!」
そうはさせまいとすぐにハングライダーの向きを変えてアルトを捕まえに行くが・・・。
「うッ!!?」
高速に飛ぶ鴉の群れが横切って思わずハングライダーの軌道を変えて群れから逃れる!
「・・・!」
男の方を見ると・・・。
「まだまだお友達は仰山おるさかい、もうちょい遊んでや♪」
笑う男の周りには先ほどの鴉の群れが今にも襲い掛かろうとこちらを睨んでいた!!
「くッ・・・!」
こいつ・・・滅茶苦茶ウザい!!
~ルタ 邪教団アジト周辺~
「ッ!!」
上空から彼が落下したのが見えた!!
「ハイヤァッ!!」
馬を全力で走らせる!!
「・・・ッ!」
思考をフル回転させて計算する!
『落下速度』・・・『落下中の位置』・・・『馬の速さ』・・・『落下のタイミング』・・・!
すべてを計算して・・・!
「ハイッ!!」
馬を全力で走らせる!!
もうすぐだ!!
彼が地面スレスレの距離まで迫っており、私もその落下地点に向かって馬を走らせていた!!
「ッ!!」
全力で意識を集中する!!
だが・・・。
「ッ!!?」
僅かに馬の軌道が左にずれていた!!
マズいッ!!
「くッ!!」
私は馬の上で立ち上がる!!
そして・・・!
「ッ!!!」
馬から全力で跳んで彼を空中でキャッチした!!
だが全力で走る馬から飛び降り、空中で落下する人をキャッチする愚行の代償はあまりに大きかった!!
「う”ッ!! ぐッ!! あ”あ”あぁぁぁッ!!!」
彼の重力の乗った落下の力で激しく地面に打ち付けられ、馬の走る勢いの残った慣性の速度は私の身体を激しく地面に擦りつけ、その摩擦を殺さんと身体が勝手に激しく転がりながら私と彼に激しい痛みを与えてくる!!
だがその天罰もいつまでも続くものではなく・・・!
「・・・ぐッ、ハァ・・・ハァ・・・!」
転がる勢いが止まると私と彼は並ぶように荒れ地の地面を寝そべる。
「ハァ・・・ハァ・・・。」
「ぅ・・・うぅ・・・。」
息を切らしながら先ほど銀蠍の毒にやられて意識が朦朧としている彼に目をやる。
「・・・。」
彼から目を逸らす。
銀蠍の毒は、恐らくアークヴォルグで取れる毒草の『ライキリ草』。
わずかに対象の意識を残したまま自由を奪う毒だ。
だから見せたくなかった。
今の私の顔を・・・。
何故なら・・・。
「ぐッ・・・うぅ・・・!」
怒りを押し殺すように歯ぎしりをしていたからだ。
~リメイク前との変更点~
・脱出の際に夜鷹割り込みシーン&和装の男との戦闘シーン追加
理由:簡単に脱出なんてさせな~いぜ不~〇子ちゃ~ん




