第39話『お二人は九条安久谷をどう思いましたか?』
作者:あけましておめでとうございます。2018年もこの作品をどうかよろしくお願いします。
第39話『お二人は九条安久谷をどう思いましたか?』
「ごちそうさま。九条の弁当美味かったよ」
「いやホントに美味かった。こんなの食べた事無かったぜ!!」
俺と智樹は九条弁当を絶賛していた。
「この程度、大した事じゃねぇ。むしろ食べてくれて助かったのはこっちなんだからよぉ」
「でも九条は大丈夫なのか? 俺たち結構食べちまったけど」
「気にするな」
そう返事をした後、それに……と何かを言おうとしたのだが、
「なあ九条、明日も一緒に食おうぜ!!」
智樹がそれを口にした。
「……別に構わないがどうしてか聞いていいかぁ?」
「そりゃ……」
「弁当に集りたいだけだろ?」
俺がそう言うと智樹は、
「何でわかった!?」
「そういう事かぁ……」
九条はため息をつくと、
「別に俺は構わない。普段から誰かと食べてる訳じゃ無ぇからなぁ。寧ろおまえらが俺なんかと一緒に食べて迷惑でないのであれば、であるがなぁ」
その表情はどこか暗いものを感じさせるのだった。
時は放課後。いつもの様に生徒会室に集まるメンバー。
そして話題は自ずと九条のものとなった。
「それで、紹介してもらった生徒はどうでしたか?」
「困った事があればある程度の協力はしてくれるらしいのですが、エスターテ杯自体には出れないと断られました」
「そう、それは残念です。因みに何と言う名前だったんですか?」
「九条です」
俺がそう言うと、
「九条……もしかして九条安久谷ですか?」
城之崎先輩は神妙な面持ちで聞き返して来た。
「下の名前は聞いてなかったので多分としか答えられませんが……」
「身長が高く、赤い髪の男子生徒です」
特徴を並べられ、俺と智樹は一瞬で俺たちの知っている九条であると結び付ける。
「その特徴と一致しているので間違いないですね」
「てか、城之崎先輩は九条について何か知ってるんですか?」
智樹の問い。それに対し、
「お二人は九条安久谷をどう思いましたか?」
逆に問いを投げかけて来た。
「見た目はかなり厳ついので勘違いしやすいですが、話してみると自分の考えをしっかりと持っているし、他人を気遣うことの出来る好青年に感じました」
それが俺の答え。そして、
「弁当超美味かったです!!」
とは智樹の回答。
「そうですか。正直意外でした。私からすれば彼は危険人物に思えたので」
「「危険人物?」」
俺と智樹が同時に疑問の声を上げる。
「この間の小競り合いを起こした人物。それが九条安久谷なんです」
「そういえば九条の奴変なこと言ってたな……」
それを聞いた俺は昼休みの事を思い出した。それは九条の口からボソッと出た一言。
『このクラスは俺のクラスよりは綺麗だなぁ。それでも全然なっちゃいないがぁ』
その言葉を聞いた時は綺麗好きなんだな程度にしか思わなかったが、例の事件の犯人だとすると、
「なあ和俊。いつか九条がうちのクラスに清掃しに来たりしないよな?」
「怖いこと言うな。まさかあいつの言う協力が他クラスの清掃な訳無い……だろ?」
「今の間!? その間は何だ!?」
そう言われてもなぁ。確かにちゃんとした理由で頼めば掃除当番くらいなら代わってくれそうでもあるが、その場合下手すると今度はうちのクラスで戦いが起こりそうだ。
「それで、広田くんの言っていたお弁当とは何のことですか?」
「ああ、それはですね……」
俺たちは昼休みの事を話した。
昼食を誘って一緒に食べた事。どうやら九条は家事が万能である事。諸事情で作り過ぎたお手製弁当を分けて貰った所、それらが絶品であった事。
それを聞いて城之崎先輩と柄巻先輩は意外だと言わんばかりの顔をしていた。
栗山さんと間仲くんは凄い人なんですねと相槌を打ちながら俺たちの話に聞き入っていた。
そんな話を続けていた俺たちだったが、
「あれ?」
俺はささやかな疑問を抱く。それは彼の言っていた言葉の中にあったこんな一言。
『只でさえ少なかった冷蔵庫の中身がマジで空になったぞぉ』
もしその言葉が本当であれば、彼はその少ない材料であのレベルのお弁当を二人分作ったことになる訳だ。
そしてよくよく思い出すとおにぎりの量は確かに多かった。それに比べおかずの種類は豊富だったが一つ一つの量がそこまで多くは無い、それどころか少ないと言っても過言ではない。
宇佐美さんの方のお弁当の方におかずを多く入れたのだろうか?
正直大した内容の疑問ではないので明日にでも本人に聞けばいいやと、その疑問を頭の片隅に仕舞い込んだのだった。




