第38話『サッカーボールだ!?』
第38話『サッカーボールだ!?』
「そういや噂で聞いたなぁ。生徒会が出ようとしてるってなぁ」
「それでどうだ、協力してくれないか?」
腕を組み、難しそうな表情をする九条。そして口が重々しく開き、
「いくつか質問がしたい」
「何だ?」
「どうして俺なんだぁ?」
「……正直、条件に当て嵌まっていれば誰でもいいってのが現状なんだ。このままだと人数不足で勝敗以前の問題だからな」
こればっかりは申し訳ないと思いながら顔色を窺う。が、どうやら気にはしていないようだ。
「人数不足かぁ。なるほど、だから俺みたいな奴に声が掛かった訳だぁ。一応聞くが条件ってのは何だぁ?」
「条件はCランクであること。一応それだけだ」
「……どういう事だぁ? 勝ちたいなら高ランクの人間をスカウトするべきだろうがぁ」
「それなんだけど実は事情があって……」
そして俺は九条に事の成り行きを簡単に説明した。
柄巻先輩が魔法師採用試験に合格するための箔を付けるために、エスターテ杯に出場し、勝利を収めようとしている事。
魔法が使えるのにも関わらず、専門校を受ける事すら許されない現状を打開したい。その為にCランクの魔法で高ランクに勝つ事で協会側の考え方を改めさせたいと言う考えがある事。
大きく分けてこの二点。説明を終えると九条は頭を掻きむしると申し訳なさそうに、
「悪いが力になれそうにない」
そう口にした。
「そうか、それはしょうがないな」
潔く諦める和俊だが、
「……随分と引き際が早ぇじゃねぇかぁ。少しは粘ったりしねぇのかぁ?」
「確かに現状人数不足でどんなことをしても人を掻き集めたい。手段を選ばないのであれば、非道な道を選べばもう少し簡単に集められるとも思った」
でも、
「それで集まった人間にやる気はあるのか? 俺たちはただ出たいんじゃない。出て、勝ちたいんだ。目的は何だって良い。箔を付けたい。自分を変えたい。出る事で自分の目的を達成できる。だけど無気力なのは駄目だ。努力したけど成果が出ない人間と何もしなかったから成果が出る訳無い人間。ただ足を引っ張るにも種類ってものがある」
「……そうだな平賀。おまえの言い分は正しい。だったら尚更俺は駄目だぁ。出た所で目的が無ぇ。おまえが今言った後者の方の引っ張り方をしちまう」
「じゃあ諦めるしかないな」
「ああ、悪いなぁ。だが平賀、おまえの事は気に入ったぁ。何かあれば相談に乗ってやる」
その申し出に、
「そうか? それは助かる」
俺は素直に応じた。
「さてと、あまり話し込むと昼休みが終わってしまうからな、早く食べようぜ」
「メシだ―」
「そうだなぁ、食うか」
そして各々弁当箱を出す。俺はいつもの和美作の弁当を、智樹は母親作の弁当を、そして九条は……
「おまえたち、もしよければ俺の弁当少し食べてくれないかぁ? 少々作りすぎて昼休み中に食べきれるかどうか自身が無ぇし、何よりも食べ物を残すのは俺の美学に反するからよぉ」
包みから大きなタッパーを二つ取り出した。
「なんだその大きな弁当箱……っていうかタッパー」
「実はとある事情で気合を入れて弁当を作る羽目になってなぁ。そうしたら思いのほか多く出来ちまって弁当箱に収まんねぇからよぉ。仕方なくこっちに詰めて来たって訳だぁ」
九条はタッパーの蓋を開ける。一つ目の中身は彩鮮やかなおかずの数々。そして二つ目は…………ギッシリと詰まった一口サイズのおにぎり。しかもその全てが真ん丸であり、五角形に切られた海苔がいくつも貼ってある。そう、そのおにぎりは全て、
「「サッカーボールだ!?」」
しかも食べやすいように一つ一つにラップが巻いてあるという気配りまで完備。
「和俊、よく見てみろ。このサッカーボール、色が違うぞ!!」
無論、味付けも変えてある。鮭フレークやゆかりなどの混ぜ込んであるタイプは言わずもがな判断できるが、それ以外。白米に具を入れて包んだタイプは、おにぎりの表面の一部に具自体を少量付着させる事で簡単に判別がつくようになっている。
しかもタッパーを開けた時に一目でわかるように具の着いた部分が上になるように並べてある。
正しく至れり尽くせりなおにぎりだった。
「なぁ、九条。そう言えばこれ作ったのおまえなんだよなぁ」
「ああ、そうだぁ。で、それがどうかしたかぁ?」
「……宇佐美さんが九条は炊事、洗濯、掃除が完璧って褒めてたから」
「七海のやろぉ、名前は伝えないくせにそんな事ばかり言いやがってぇ……」
ビキビキと眉間にしわを寄せる九条。
「なあ九条。もしかしてだけどおにぎりの形がサッカーボールなのは宇佐美が関係してるのか?」
「ああそうだぁ。あのバカが『友達とおかずの取り換えっこするからいつもより凝ったものにして』とか言い始めたからよぉ、仕方なく気合入れて作ったらこの分量になっちまったぁ。そのせいで只でさえ少なかった冷蔵庫の中身がマジで空になったぞぉ。今日こそ買い出しに行かねぇと今日の晩飯が白米と塩だけになっちまう」
「……なぁ和俊、俺思ったんだけどさぁ」
「奇遇だな、俺も多分おまえと同じこと考えてるわ」
この九条と言う男ガタイが良く、顔が凶悪で、色々と誤解を招きやすそうであるが、その本質はただのどこにでもいる、
「「(ただの主婦じゃねぇかァァァァ!!)」」
そう心の中で呟くのであった。
因みに、九条の弁当はマジで美味しかった。




