第18話『まあ来ねぇな』
第18話『まあ来ねぇな』
「決めておきたい事ですか?」
「はい。具体的には人を探す時間と鍛錬をする時間の割り振りについてですね」
エスターテ杯が行われるのは夏だが、それはあくまでも本選。
予選は六月に行われるのだ。
「人探しばかりに気を取られていては人数が揃っていても勝つ事は出来ないですからね」
「そうね。それで平賀くんに相談なんだけど、佳澄は鍛錬の方に集中させてあげられないかしら」
「加奈子、それは……」
申し訳なさそうな顔をする柄巻先輩に俺は、
「いいと思います」
即答した。
「俺や智樹、城之崎先輩は出ない訳ですからその分サポート面で頑張るのは当然の事です」
「ですが…………いえ、わかりました。期待の答えられるようにしておきます」
申し訳ないと言いたそうな表情をしそうになるがそれをグッとこらえる。
「そういえば柄巻先輩の魔法って何ですか?」
「ああ、まだ見せていませんでしたね。」
そう言うと手の平に魔力を集め、銀色のメタモルフォーゼスを作り上げる。
「変身」
その声に呼応するように輝きが増し、その光が柄巻先輩を包み込む。
そしてその光の中から現れたのは、白銀のドレス型のフルプレートアーマーに身を包み、その手には一振りのロングソードを手に携えた柄巻先輩の姿だった。
「どうでしょうか?」
「これはまた……あまり見かけないタイプですね」
平凡な魔法の一例は母さんの様に物を宙に浮かすことが出来たり、手から炎を出す、魔力そのものを放つ、等だ。
変身する際は個人差が生じるものの、その魔法を使う上で最も最適な姿に変わると言う。
姿が変わるのはこの為だ。
だが、柄巻先輩の場合は少し違う。
「柄巻先輩の魔法は……この姿になる魔法なんですね」
「そうです」
つまり、この姿に変身した上で何かが出来る様になるのではなく、敵の攻撃から身を守る鎧に敵を切り裂く剣を持ったこの姿になるのがこの魔法の完成の形なのだ。
ある程度、身体能力に補正は付くと思われるがこれではあまりにも、
「本人の技量頼りな所が多いですね」
「はい。ですが私はこう見えて父方の実家が剣術道場だったのでそこで培った技術、心得程度ではありますが持ち合わせています」
「と言うことは完全に剣の初心者では無いって事ですね」
そうは言ったもののこれでは格上相手となると心もとないのも事実。
しかし光明は見えた。
ありふれた魔法であれば採用試験の際に霞んでしまうが、希少性という点については十分だと思われる。
「参考になりましたか?」
「ええ、ありがとうございます」
柄巻先輩は魔法を解き元の姿に戻った。
程なくして柄巻先輩は鍛錬の為に帰宅し、俺と城之崎先輩も人材探しに出た。
とは言え、放課後となれば残っているのは部活動に勤しむ生徒と教室で駄弁っている少数の生徒だけだった。
そして声を掛けてもやはりではあったが首を縦に振る者はいなかった。
結局その日は約一時間程度で解散した。
その際、連絡用で連絡先を交換したのだが、その時の智樹があまりにもアレだったのでここでは省略させてもらう。
「やっぱり早々見つかるもんじゃ無いな」
智樹がぼやきたくなるのも理解できる。
いつもの帰り道、俺たち二人は話し合いをしていた。
「せめてもの救いは、決して無反応では無かったって事だな。自分も出てみたいって言ってくれる生徒もいた。けどそう言う奴に限ってランクが高い」
「それに、Cランクではマジでいない」
「「どうしたもんか」」
はぁ、と揃ってため息を吐く俺達。
「多分だけど、今日の一件で一年生の殆どに『生徒会がエスターテ杯に出ようとしている』といった内容の話が広まるだろう。メンバー集めの為に現生徒会である城之崎先輩と柄巻先輩、そして俺達が動いていることも含めてな」
「そうなると間違いなく警戒されるだろうな」
俺達は腕を組んで唸る。
「運が良ければそれを聞きつけ自主的に参加したいと言ってくれる奴もいるかも知れないけどな」
智樹の楽観的希望も正直俺の希望同然なのだが、
「まあ来ねぇな」
「だよな!!」
そうだ、そんなことが起こる訳が無い。
しかしながら現実は小説よりも奇なりなんて言葉が存在するように、楽観的希望の女神様はこんな俺達を未だに見放してはいなかったのだ。




