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メタモルフォーゼス  作者: 新町 東
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第16話『……何が望みだ』

第16話『……何が望みだ』


 溜息を吐いた智樹は俺の肩に手をポンと置くと、


「現状切羽詰まっているのは解る。でもDランクの俺が出るなんてそりゃおかしいだろ。冗談はよしこちゃんだぜ」


 こんな状況ではあるがまだふざける余裕があるようなので説得することにした。


「理由としては汚れ役を買って出なければならない場合がある点についてだ。正直、人数をただ揃えるだけなら意外とあっさり揃う可能性がある。ランクを考慮しない場合であればBランクである委員長辺りは事情を説明すれば協力してくれる可能性が非常に高い」


「確かに、向上心の塊みたいな奴だからな。箔を付けれると言えば出てくれそうではあるな。それに似たような考えの連中に声を掛ければ確かに集まりそうではあるが……」


「そうだ、ここでネックになってくるのがCランクの魔法持ちであると言う条件だ。魔法検査の際にそれが発覚すれば、殆どの奴が魔法師を目標にはしなくなるし、その上未だの諦めていない奴の方が圧倒的に少ないのも事実。そこでDランクだ」


「汚れ役っつったか?Dランクに一体何をさせようってんだ?」


「『人数合わせ』そして『わざと負けてもらう』この二点だ」


 智樹の顔が酷く歪んだものとなる。


「つまりあれか、俺に求められているのはDランクで且つ、都合の良い人間である所か?」


「そうなるな。一応説明を入れておくが、人数合わせは言わずもがなだがわざと負けてもらうってのはそのままの意味だ。あくまでもCランクの人間で格上を倒してPRってのが目的ではあるが、流石にDランクが何かの間違いで格上に勝っても見ろ。負けた方は一生もんのトラウマを抱えることになるぞ」


「それだったら和俊が出たらいいじゃないか。Dランクで非常に都合の良い訳だし」


「俺はダメだ、『平賀』の名が邪魔過ぎる」


 ただでさえビックネームの次男で世間様の期待値が高かったせいか、Dランクだった為に普通校に入学した際、やれ落ちこぼれだ、名に泥を塗るような奴だと言われている俺がどの面下げて『エスターテ杯に出ま~す』なんて言えるか。


 俺が叩かれるだけなら構わないがその矛先が両親や兄貴に向かうのは止めて欲しい。

 

 そう言うと何か唸るように考え込んだ智樹は

 

「交渉しよう」


 そう切り出して来た。


「……何が望みだ」


「……城之崎先輩と柄巻先輩とのお茶の場を設けて欲しい」


 智樹の下心が激しい主張を繰り出して来た。


「おまえばかりあんなに美人な先輩たちとお近づきになりやがって、羨ましいったらありゃしないぜ」


「それだったら生徒会見習いになればいいじゃないか、合法的に近づけるし、連絡先の交換だって業務用と言い張れば簡単に貰えるだろう?俺もいるから困ったら助けてやれるし」


「はい、今の言葉の最後の一文!!『俺もいるから』だぁ?」


 やれやれと肩をくすめ、呆れかえる。


「知らないのか和俊。おまえがいるとな、女子が全部取られるんだよ!!」


 それは智樹の幼馴染としての経験から培われた悲痛な叫びだった。


「そんなこと知らねぇよ!!」


「本当に昔からそうなんだよ。小・中、共に殆どのクラスの男子が一世一代の告白をした際の断わり文句が『私は平賀くんが好きなの』に類する言葉ばかりだったんだぞ!!」


 智樹は血の涙を流しながら語る。


「そのくせにおまえは恋愛に全く興味を示さないし、ベットの下にエロ本の一冊もないし、何なんですか?十五歳にしてあれですか?枯れたんですか?おまえの青春は既に雪景色なんですか?」


 和俊の両肩を掴み、容赦なく揺さぶる智樹。


「智樹の主張は理解できたがその理論だと既に手遅れだろ?」


「……ハッ!?」


 驚愕、そして諦めの感情が顔に滲み出る。


「くそぉ……くそぉ……それなら別の……別の…………そうだ!!」


 道端でいきなり頭を深々と下げると、


「義兄さん、妹さんを俺に下さい!!」


 ターゲットと態度を切り替えて来た。


「何だそんな事か」


 ふぅ、と一息吐くと俺は智樹の肩に手を置き優しく語り掛ける。


「言ったはずだぜ親友。両親はおまえのことを認めているし、兄貴もおまえの事は実の弟の様に可愛がっている。由樹さんも和美の事を本当の妹の様に可愛がってくれている。だからお互いの家族間に問題は起こらないと俺は思っている」


「義兄さん!!」


 智樹のキラキラとした喜びに満ちた瞳がこちらを見てくる。


「だから後は智樹と和美が恋人の関係になるのはおまえ次第だ。和美も智樹の事は悪く思っていないはずだしな。だから……」


「義兄さん……!!」


 俺は笑顔でそれを告げる。


「後は兄貴とサシでやりあって勝てば晴れて文字通りのゴールインだ。頑張れよ!!」


「それは無理だって言ってんだろォォォォォォォォ!!」


 その日一番の絶叫が閑静な住宅街に響き渡った。


「しょうがないだろ、和美の好きな異性のタイプが『私の事を守ってくれる人』なんだから。それを聞いた兄貴が『なら俺を倒せるだけの奴じゃなきゃ失格だな!!』なんて言うから」


「そこのハードルが高過ぎる!!」


「じゃあ決定な」


「え?」


 呆然としている智樹に現実を伝える。


「智樹と和美、それとガチバトル次第ではあるが結婚は認めてやる。だが認めてやる以上こちらに協力をして貰うのも事実だ。力を貸して貰うぞ、未来の義兄弟よ」


「割に……割に合わねェェェェ!!」


 悲痛な叫びが今日一番の絶叫を更新した。




「良かったですね加奈子、協力してくれることになって」


「ええ、これで希望は見えた気がします」


 バス停で帰りのバスを待っているその二人は今日の出来事を振り返っていた。


「ですが正直意外でした。彼も私たちと同じことを思っていたなんて」


 それはどうして協力してくれるのかを聞いた時の事だった。




「簡単な事ですよ、そりゃ俺も納得出来てないんですよ。Cランクでは魔法師に成れない事に」


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