9 セルロの過去
「それってどういう意味だ?」
「・・・そのままの意味・・・」
「先代魔王にお前の親が殺されたってことか?」
「・・・少し前に魔界で戦争があったの知ってる・・・?」
「ああ、魔界大戦だろ?それはなんとなくだが聞いたよ。」
400年ほど前、魔界は二つの勢力により戦争が起こされた。一つは先代魔王の率いる国、もう一つは死霊術、つまりネクロマンスを使って侵略を企んだ敵国だ。いわくその王はとても正気ではない行動ばかりを取っていた為、侮蔑をこめて『狂王』とも呼ばれてもいたらしい。
「・・・そのときの敵国の王の娘が私・・・」
「あの『狂王』のか?」
「・・・うん・・・」
「じゃあなぜセルロは生きているんだ?」
そう、狂王を危険とみなした先代魔王は戦争の後その家族を皆殺しにしたと聞いた。しかし、目の前にいる少女はその家族だという。
「・・・私自身が死霊術によって甦ったから・・・」
「それは父親が?」
「・・・うん・・・」
恐らく狂王の最後の頼みか、もしくは戦利品として引き取ったとかだろう。狂王の操る死霊術はほとんどが不完全と聞いていたが娘に使った際に初めて成功したんだな。それを研究に使わないはずがない。
「なんというか、無神経に聞いてしまったな。」
「・・・気にしてないから、気にしないで・・・」
「それでも謝るよ。」
また重苦しい空気に変わろうとした途端、外からリーランの声が聞こえた。
「おい!起きろ!ワームがきたぞ!」
「わーむ?」
「・・・任せて・・・」
「悪い、セルロ頼んだ!」
二人に続いて外を見てみると、そこには黄土色の体をした蟲のような怪物がいた。大きく開いた口には無数の牙があり、太く長い胴体が後ろの森林の奥に続いていた。
「な、なんだこいつは!?」
「こいつはワームと呼ばれる魔獣で、雑食だから普通に人も食うやつだ。」
「・・・ついでに言うと魔法に弱い・・・」
「そういうこと。だから魔法に長けたセルロを呼んだって訳だ。」
「な、なるほど。」
「トシユキ様、一応私の後ろに下がっておいた方がいいぞ。」
「わかった。」
そう言ってリーランと俺は後衛に下がり、その代わりにセルロが魔導書を持って前に進んだ。
「・・・ファイヤーアロー×15・・・!」
セルロがいつもどおり静かに喋った途端空中に火の矢が15本出現した。その矢が一斉にワームに向かって放たれていた。強力な火の矢を当てられたワームは驚き、慌てている。
「・・・ファイヤーアロー・ウォーターアロー・ウインドアロー×25・・・!」
そんなワームにお構い無しと言わんばかりに次々魔法を打ち込むセルロ。炎、水、風で出来た矢25本ずつワームに突き刺さっていき、次第に動きが鈍くなっているところを更に魔法でセルロが畳み込む。
「・・・サンダーアロー・アースアロー×30・・・!」
一際多い雷と土で出来た矢がワームの全身に刺さる。とどめの一撃が効いたようで大きな音を立てて倒れたワームは動く気配がない。
「よっし!ナイスだセルロ!これで飯にありつける!」
「え?こいつ食えるのか?」
「焼いて食うと肉みたいな味がするんだ。デカさも充分デカいし、一食分には多いくらいだな。」
「そ、そうなのか。」
そう言うと、ウキウキとした様子でワームを捌いていくリーラン。腹が減ったからありがたいけどこいつが動いているところを見たとなるとちょっとな。
「セルロ、火頼むわ。」
「・・・了解・・・」
意外とサバイバルに慣れているのかセルロもテキパキと動いていく。てっきり俺と同じインドア派だと思っていたんだが。
そうこうしている内にもうワームが焼き上がっていた。焼かれたにおいも普通に美味そうだ。
「じゃあいただきます。」
「いただきます!」
「・・・いただきます・・・」
まずは一口。うん、うん、イけるなこれ。てか、普通に美味いわ。
「本当に肉みたいな味するんだな。」
「だろ?こいつら動き回ってるから意外と筋肉ついてんだよ。」
「・・・じゅーしー・・・」
うまい!食えば食うほどハマる味だなこれは。次々と手が伸びてしまう。
次に次にと食べていったらいつの間にか完食をしていた。
「あ~、食った食った!」
「普通に美味かったな。また食べたいくらいだった。」
「・・・眠い、寝てくる・・・」
俺も食ったら眠くなったな。でも見張りもあるだろうし起きないとな。
「リーラン、見張り変わろうか?」
「あ、別にいいよ私こういうの慣れてるし。ゆっくり寝てなって。」
「悪いな。」
「いいよ、別にこれぐらい。」
「それじゃおやすみ。」
「はい、おやすみ。」
テントに戻るとセルロが寝息を立てていた。こうして寝顔を見るとかわいいもんだ。こいつも意外と大変な環境だし、少しくらい優しくするか。
「おやすみ、セルロ。」
返事が返ってこないところを見ると熟睡のようだな。ワーム退治に頑張ってくれたし、まぁ当然か。
そんじゃ、俺も寝るかな。
「・・・おやすみ・・・」
しばらくして、いつもどおりの静かな声でセルロは気づかれないようにそう答えた。




